マレーシアにおいて、労務紛争を扱う手続としては、主に、1955 年雇用法(Employment Act 1955)に基づく労働裁判所(Labour Court)、1967 年労使関係法(Industrial Relations Act 1967)に基づく人的資源省労使関係局の斡旋及び産業裁判所(Industrial Court)があります。
(1) 労働裁判所
労働裁判所は、雇用法に基づき、労働者に対する賃金の支払い等を取り扱う、人的資源省労働局が所管する準司法機関です(雇用法 69 条)。労働者は、労働裁判所において、職場における差別に関する請求を行うこともできます(同法 69F 条)。労働裁判所では、労働局担当官が裁判官の役割を果たします。労働裁判所は、労働組合による苦情処理制度を持たない労働者の権利を保護する役割を担っています。
(2) 人的資源省労使関係事務局の斡旋
使用者又は労働組合は、労務紛争が存在し、又はそのおそれがある場合において、解決されない場合には労使関係事務局長に報告することができます(労使関係法 18 条(1))。また、労使関係局長は、労務紛争が存在し、又はそのおそれがある場合において、公共の利益のために必要と判断した場合には、紛争解決のための必要な手続きをとることができます(同法 18 条(3))。労働関係局長は、紛争が解決できないと思料する場合は、人的資源省相に通知します(同法 18 条(5))。人的資源省相は、適切であると思料する場合には、案件を産業裁判所に付託します(同法 20 条(3))。
(3) 産業裁判所
産業裁判所は、労使関係法 21 条に基づいて設置された、労使間の紛争、労働組合と使用者間の紛争及び同法に基づく権利義務関係違反に関する紛争等の労働紛争を扱う特別裁判所です。産業裁判所の審理においては、個別の案件ごとに、裁判官と労使委員 2 名で構成されます(同法 22 条(1))。
産業裁判所は、下級裁判所としての機能を有しているため、産業裁判所の判決に不服の場合には、高等裁
判所に上訴することができます(同法 33A 条(1))。