メキシコの労働紛争は、原則、連邦労働調停登録センター(Centro Federal de Conciliación y
Registro Laboral; CFCRL)または州の調停センターによる調停を行い、それでも解決できない場合に、労働裁判所にて審判を図り解決します。ただし、以下に関連する事案は、調停を経ることなく、労働裁判所での裁判による解決を図ることとなります。
‧ 妊娠を理由とした雇用や就業に関する差別、性別、性的指向、人種、宗教、民族的出身等による差別や嫌がらせ
‧ 労働者が死亡した場合の受益者の指名
‧ 労災、出産、病気、障害、育児に関する社会保障の利益
‧ 団結の自由、団体交渉権の保障、労働者の人身売買や強制労働、児童労働に関連する基本的権利と公共の自由の保護
‧ 労働協約の所有権をめぐる紛争
‧ 労働組合規約やその修正への異議申立
なお、調停センターには CFCRL と州調停センターがあり、労働裁判所も連邦労働裁判所と州労働裁判所あります。連邦機関が管轄する産業は次のとおりです。
繊維業、電気産業、映画産業、ゴム産業、製糖産業、鉱業、冶金及び鉄鋼業、炭化水素産業、石油化学産業、セメント産業、石灰産業、電子・機械部品を含む自動車産業、製薬化学・医薬品を含む化学産業、紙パルプ産業、植物油脂産業、食品製造・加工業、飲料水製造業、鉄道、製材・合板・集成材の製造を含む伐採産業、鍛造ガラス版やガラス容器製造に係る焼き付けガラス産業、たばこ産業、銀行業、貸付業
このほか、連邦政府が管理する企業や、連邦政府調達先企業等における紛争、上述以外の産業にかかる事案であって 2 つ以上の州にまたがる事案や労働者に対する教育訓練、安全衛生に関する事案は、連邦機関の管轄となります。
(2) 調停
調停は、CFCRLまたは州調停センターへの書面または電子的方法による申立によって開始されます。調停センターは申立の受理から 15 営業日以内に調停を実施しなければならず、調停期日は使用者に対して 5 営業日前までに通知されます。なお、調停が、両当事者によって調停センターに直接申し立てられた場合、調停は即日行われるか、または申立から 5 営業日以内に調停期日が定められ通知されることとなります。
調停では、調停人によって、和解合意案が提案され、これに両者が合意した場合は、和解合意書が作成され、両当事者には認証謄本が渡されます。また、調停議事録の認証謄本も提供されます。両者が合意に至らない場合、十分な調停が尽くされたとする証明書が発行されます。
調停期日に当事者の一方または両方が正当な理由によって出席しない場合は、期日はその日から 5 営業日以内の間で延期され、新たな期日が通知されます。正当な理由なく被申立人が欠席した場合、十分な調停が尽くされたとする証明書が発行され、正当な理由なく申立人が欠席した場合は、手続が中止されます。いずれの場合も、労働者は再度調停を申し立てる権利を有します。
(3) 労働裁判
労働裁判は、大きく通常手続と特別手続に分けられ、以下に関する紛争は特別手続が、それ以外の紛争は通常手続が取られます。
‧ 非人道的で過度な長時間労働
‧ メキシコ国外での労務の提供においてメキシコ国内で締結された雇用契約書の承認
‧ 使用者が労働者に賃貸する住居、使用者が労働者に提供する教育・訓練、労働者の勤続年数や勤続手当
‧ 船員における予め定めた場所への移送、船舶の押収や毀損等による雇用関係の終了の際の船員の
権利や補償、船舶の残骸や貨物の回収を船員が行う場合の給与等
‧ 航空機乗務員の異動に伴う費用負担や航空機が使用できなくなった場合の移動にかかる賃金や費用
‧ 労働災害による障がいや死亡への補償や産業医の選任に起因する紛争
‧ 給与 3 カ月分を超えない額の給付や福利厚生に関する紛争
‧ 死亡または失踪時の給与等の受取人に関する紛争
‧ 社会保障に関する紛争通常手続は、次の流れで進められます。
- 提起
原告は、原告や被告に関する情報、要求の内容、要求の根拠となる事実等を記した書面を提出します。
なお、一部の例外を除き、当該書面には、調停センターが発行した「十分な調停が尽くされたとする証明書」を添付する必要があります。
- 答弁及び反訴
労働裁判所は、当該書面の受理から 5 営業日以内に被告を召喚し、書面や添付された証拠の写しを提供します。被告は、写しの受領から 15 営業日以内に正確に事実を押さえ原告の主張に全て答える内容の答弁書と十分な証拠を提出しなければなりません。また、被告は、この時、反訴を提起することもでき、労働裁判所は、反訴を認める場合、15 営業日以内に原告を召喚し、反訴原告の反訴状や証拠の写しを提供します。この場合、原告は、15 営業日以内に答弁書と証拠を提出しなければなりません。
- 異議等の申立
提出された答弁書や証拠の写しは、原告に提出され、原告は 8 営業日以内に、これに対する異議やその証拠を書面で提出しなければなりません。提出された異議等は、その写しが被告に提出されます。
被告は、5 営業日以内にこれに対する異議やその証拠を書面で提出します。反訴が提起された場合、その反訴についても同様となります。
- 予備審理
異議や証拠の提出期間を経過すると、10 営業日以内に予備審理の期日が設けられます。予備審理では、手続の正当性の検証や証拠の確定、争いのない事実の確定、審問期日の決定等が行われ、合意書が作成されます。
- 審理
合意書の作成から 20 営業日以内に審理の期日が設けられます。審理では、証拠の開示と確定、当事者の弁論を行い、判決が下されます。
なお、被告が原告の主張を認める場合、その日から 10 営業日以内に審理の期日が設けられ、判決が下されます。
特別手続の流れも、通常手続と同様ですが、答弁書の提出期間は 10 営業日、被告の答弁書に対する原告の異議等の提出は、答弁書等の写しの受領から 3 営業日以内に設定されています。労働裁判所は、異議や証拠の提出期間経過後 15 営業日以内に、証拠や論点を確定するための命令を出します。また、必要がある場合には、10 営業日以内に予備審査を設定することができます。
(4) 経済的性質の集団紛争
労働協約(contrato colectivo や contrato-ley)における新しい労働条件の実施や労働条件の変更(正当化する経済的要因がある場合や、生活費の上昇が収入と労働に不均衡をもたらす場合に認められ)、集団的労働関係の中断や終了(不可抗力や使用者の死亡に起因する場合、使用者に帰責事由のない原材料の不足、資金不足や破産等の事由がある場合に認められる)を目的とする紛争は経済的性質の集団紛争として扱われ、労働協約を締結している労働組合、労働者の過半数または使用者が提起することができます。
この場合の労働裁判は、ⅰ)書面による提起、ⅱ)被告による答弁(15 営業日以内)、ⅲ)原告による応答(答弁から 5 日営業日以内)、ⅳ)審問(25 営業日以内)期日より 10 日前までに専門家による証拠や意見を提出
させることができる。ⅴ)判決(30 営業日以内)と進められます。