インドでは産業分野ごとや規制内容ごとに多くの連邦法及び州法が存在し、全ての労働関係法令において労働者該当性の判断基準が統一されているわけではありません。なかでも解雇規制など労使関係において重要な規制を設ける産業紛争法(Industrial Disputes Act,1947)の労働者該当性の判断基準について確認しておくことが重要となります。なお、産業紛争法及び後述する産業雇用就業規則法は、労使関係法典(未施行)に統廃合されますが、労働者(Workman)の判断基準は基本的に変わりません。
(1) 労働者該当性の判断について
産業紛争法では、「労働者(Workman)」とは、雇用条件が明示的であるか黙示的であるかを問わず、賃金又は報酬のために、手作業、非熟練労働、熟練労働、技術的、作業的、事務的、又は監督的業務を行うためにあらゆる産業で雇用される者(見習いを含む)と定義されています(産業紛争法2条(s))。また、同条は、監督的立場で雇用され月額INR1万以上を超える賃金を受け取る者で、かつ、職務の性質上、又は与えられた権限により、主に管理的な性質を持つ職務を遂行する者は、労働者に該当しないと規定しています。
また、裁判例では、賃金か報酬かにかかわらず、直接又は代理機関を通じて、雇用されている人を意味し、主人(Master)と使用人(Servant)の関係が存在し、主人は使用人が行う仕事を監督し、管理するものとし、使用人がどのような仕事をするかを指示するだけでなく、使用人がどのように行うかについても監督しなければならないとの判断基準を示しています。
したがって、インドにおいては労働者該当性の判断は、雇用契約書に記載される業務内容など形式的な肩書等だけでなく実際に問題となる従業員が行う業務や監督的立場の有無又は業務遂行についてどのように監督されるか等の事情を総合的に判断する必要があります。そして、当該従業員が使用者から業務遂行方法についてまで指示がなされている場合は労働者に該当する可能性が高くなります。
(2) 労働関係法令の適用範囲について
産業紛争法上の労働者(Workman)に該当する者については、産業紛争法の解雇規制が適用され、法令の規制に基づき解雇手続を進める必要があります。また、解雇について紛争が生じた場合には、調停官による調停や労働裁判といった産業紛争法で規定される手続に従うことになります。
また、産業雇用就業規則法では、産業紛争法の労働者と同じ判断基準を利用しているため前記労働者に該当する者の事業場については、産業雇用就業規則法に基づき就業規則を策定運用する必要があります。もっとも、産業紛争法の解雇規制は労働者が50人以上いる事業場に適用され、産業雇用就業規則法の就業規則に関する規定は一部の州を除き労働者が100人以上いる事業場に適用されます。
労働者に該当しないノン・ワークマン(Non-Workman)については、契約解除の方法等の労働条件については、州ごとの店舗施設法の規定に反しない限り労使間の雇用契約に従うことになります。