「タイの労働法令における、労働者該当性の判断基準と労働者に該当する場合に適用される規制又は該当しない場合に適用されない規制」

(1) 労働者該当性

労働者とは、その名称のいかんにかかわらず、賃金を受け取り使用者のために労働することに同意した者をいうと定義されています(労働者保護法第5条、労働関係法第5条)。そのため、形式的な契約形態にかかわらず実態として当該定義にあてはまる場合には労働者に該当するものと解されます。

(2) 労働者が受けられる保護

1.賃金

賃金については、①男女平等の原則(労働者保護法53条)、②通貨(=タイバーツ)払いの原則(労働者保護法54条)、③直接払いの原則(労働者保護法55条)、④全額払いの原則(労働者保護法76条)、⑤毎月払い、一定期日払いの原則(労働者保護法70条)といった諸原則が定められています。

②については、労働者の承諾があれば手形又は外国通貨での支払いも認められています。③について、賃金は労働者の勤務場所で支払わなければなりませんが、労働者の承諾があればこの限りではなく、銀行振込による支払についても事前の承諾が必要であると解されています。

2.労働時間及び休憩

労働時間は原則として1日8時間以下、週48時間以下でなければなりません。ただし、労働者の健康と安全を害する可能性がある仕事として労働社会福祉省令で定められているものに関しては1日7時間以下、週42時間以下でなければなりません(労働者保護法23条)。休憩については1日あたりの連続労働時間が5時間を超える前に、1時間以上の休憩時間を与えなければなりません。労働者と使用者との間で1回の休憩時間を1時間未満とする合意もできますが、その場合も1日の休憩時間の合計は1時間以上でなければなりません(労働者保護法27条)。

3.休日

休日は原則として週に1日以上、週休日と次の週休日の間の間隔は6日以内でなければなりません(労働者保護法28条)。使用者は原則として休日に労働者に労働をさせてはなりませんが、労働の性質上継続して行なわなければ業務に支障をきたす場合や緊急の業務の場合等は、使用者は必要範囲内で労働者に休日労働を命じることができます(労働者保護法25条)。 

4.休暇

1年間勤続した労働者については、年6日以上の年次有給休暇を取得する権利を有します。勤続年数に応じて年次有給休暇の日数が増加するような法定の制度はありませんが、年6日を超えて休暇を与えること自体は可能です。また、労働者と使用者との事前合意により、未使用の年次有給休暇を次年度に繰り越すことも可能なほか、勤続1年未満の労働者については、使用者が勤務期間に比例して年次有給休暇を決定することもできます(労働者保護法30条)。年次有給休暇のほかには、病気休暇、出産休暇、不妊手術休暇、用事休暇、兵役休暇、研修休暇等が法定されています。

5.解雇

使用者が労働者を解雇する場合には原則として、①1給与期間前までに解雇予告をおこなったこと(期限の定めのない雇用の場合)(労働者保護法17条)、②法定の解雇補償金を支払ったこと(労働者保護法118条)、③年次有給休暇の買取り(労働者保護法67条)を要するほか、④解雇禁止事由(明文規定による個別の解雇禁止事由または不公正解雇)に当たらないことが求められます。