「バングラデシュの競業避止義務の有効性の基準」

1. 法的枠組み

競業避止義務の有効性は、契約法(Contract Act 1872)第27条の例外規定に該当するか否か、という点で判断されます。

同条は、合法的な職業、取引、またはビジネスを行使することを制限する合意、条項は、その範囲で無効である、と規定しています。本条文により、貿易又は事業活動を妨げる契約は法的強制力がないと解釈されます。本条には例外が定められており、設定された制限が、事業の性質および関連要因を考慮して、裁判所によって合理的であると見なされる場合は、有効で執行力がある契約と扱われます。

同条は営業権を対象としていますが、雇用契約における競業避止義務も対象になると解釈されています。

 2. 競業避止義務の有効性の判断要素

競業避止義務の合理性に関する判断要素は、期間(特段の事情がなければ6から12か月程度が目安です)、地理的範囲、同様の事業活動に従事する従業員の能力に課せられる制限の範囲に関する条項の合理性、雇用主のビジネス上の正当性、そして、その制限の対価として従業員が適切な報酬又は対価を受け取っているか否かなどの要素が挙げられます。

従業員に対する報酬は、金銭的または非金銭的な性質を持つことができますが、その額は、市場原理からみてある程度合理的なものでなければなりません。

競業避止義務は、契約条件の明確さ、相互理解を確保するため、両当事者が署名した書面による契約で明示的に記載しなければなりません。

バングラデシュでは、労働者保護の意識が強く、競業避止義務の規定の有効性が否定される可能性は低くありません。そのため、同規定が無効と判断される場合に備え、機密情報や企業秘密の保護を目的とした別途秘密保持契約を締結する必要があります。