退職後の競業行為の禁止は、退職者の職業選択の自由を制限する措置であるため、合理的な範囲内に限って有効性が認められると解されています。
合理性の判断基準としては、「退職後の秘密保持義務が合理性を有することを前提として……期間、区域、職種、使用者の利益の程度、労働者の不利益の程度、労働者への代償の有無等の諸般の事情を総合して合理的な制限の範囲にとどまっていると認められるときは、その限りで、公序良俗に反せず無効とはいえない」とした裁判例があります(東京地判平成15年9月19日。ダイオサーズサービシズ事件)。
競業避止義務の合理性については様々な要素を総合的に考慮して判断されるため、その有効性が認められるかはケースバイケースとなりますが、制限される職種や期間・地理的範囲等を最小限のものにとどめておくことや、一定の代償措置を設けておくこと等が重要であるといえます。