「マレーシアの賃金の支払方法に関する法規制」

1.賃金の支払方法に関する規制

賃金(雇用契約に基づき労働者に対して労働の対価として支払われる基本給及びその他手当ての内、福利厚生、旅費交通費その他雇用法により定められた金銭の支払を除いたものをいいます。)は、原則として労働者が有する銀行口座に振り込む方法により支払われる必要があります(雇用法25条1項)。 例外として、使用者と従業員との間で書面による合意がある場合又は主務大臣の許可がある場合に限り、現金又は小切手による支払が可能となっています(雇用法25条A)。

 2. 賃金の支払期間に関する規制

雇用法は、賃金期間(賃金の支払の対象となる期間をいいます。)は1か月を超えてはならず(雇用法18条1項)、また、賃金は賃金期間の最終日から7日以内に支払わなければならないとされています(雇用法19条)。その結果、使用者は労働者に対し、毎月最低1回は賃金を支払わなければなりません。

また、使用者が労働者に対して賃金を貸金として事前に支払ういわゆる賃金の前借についても、雇用法上一定の規制が存在しています。すなわち、雇用法によれば、不動産の購入費用に充てる目的がある場合その他一定の場合を除き、1カ月分の賃金額を超える額の前借金の提供を行うことはできません(雇用法22条)。

 3. 賃金の控除に関する規制

雇用法によれば、同法で定める場合を除き、相殺等の方法により賃金控除を行うことはできません(雇用法24条1項)。 同法において認められる場合とは、控除を行おうとする日から遡って3か月の間に行われた賃金の過払いが存在する場合、雇用法13条1項に基づき労働者が使用者に対して予告通知なしで雇用契約を終了させる際に発生する補償金を支払う場合、前借金の返済を行う義務がある場合及びその他法令で認められる場合をいいます(雇用法24条2項各号)。

ただし、上記のように賃金控除が認められる場合であっても、原則として1か月間に支払われる賃金の50%を超えて控除を行うことはできないとされています(雇用法24条8項)。当該賃金控除額規制の例外としては、例えば、雇用法13条1項に基づき労働者が使用者に対して予告通知なしで雇用契約を終了させる際に発生する補償金を支払う場合、前借金の返済を行う義務がある場合があります(雇用法24条9項(a)(b))。