「タイにおける文書の保存義務に関する法規制」

(1) 会社の会計帳簿等の保存について

会計法(Accounting Act)では、会計責任者は、会計帳簿および会計帳簿への記入に使用した裏付け書類を、決算日から5年以上保存しなければならないと定めています(会計法14条)。

他方で、同条は、歳入局の判断により、5年以上7年以下の範囲で、会計帳簿等の保存期間の延長が命じられる場合があるとも規定しています。また、歳入局との間で税務関係の紛争が生じる場合も考えられるところ、国の租税債権の消滅時効は10年となっています(民商法193/31条)。

これらのことも踏まえると、会計帳簿等については、最大10年間保存しておくという運用が考えられます。

(2) 労務関係の文書の保存について

使用者は従業員の雇用が終了してからも、雇用関係終了日から2年以上は従業員名簿を保管しておかなければなりません。また、賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当の支払に関する台帳についても、支払いがあった日から2年以上保管することが求められます(労働者保護法115条1項)。

なお、労務関係についても従業員との間で何らかの紛争が生じることが考えられます。この点、民事上の請求については、消滅時効が原則として10年となっています(民商法193/30条)。

そのため、労務関係の文書についても、証拠を保全しておく観点から、最大10年間保存しておくという運用が考えられます。