⑴ 概要
メキシコは連邦制を採用しており、メキシコ国内の裁判所には、連邦裁判所と州裁判所があります。当該州内のみで生じた事件については当該州の裁判所が、複数の州にまたがる事案や連邦が関係する事案については連邦裁判所が担当しています。連邦裁判所と州裁判所は、基本的には二審制を採用していますが、裁判所の判決が人権を侵害している場合や、判決の基となった法律が憲法違反であり、これによって人権が侵害されたような場合には、さらにアンパロ裁判(連邦裁判所管轄)に訴えることができ、その場合は合計4回まで審議を受けることが可能です。
① 連邦レベルの司法機関
連邦司法機関としては、最高裁判所、巡回合議裁判所、控訴合議裁判所、地区裁判所、連邦選挙裁判所といった裁判所があります。
このうち、連邦レベルの第一審裁判所としては地区裁判所があり、民事・刑事・行政または国際条約における連邦法の適用に関する訴訟等を取り扱っています。地区裁判所に対する控訴は、控訴合議裁判所が取り扱っています。
② 州レベルの司法機関
州レベルの裁判所としては、上級司法裁判所、第一審裁判所、下級裁判所・少額裁判所・治安裁判所・地方裁判所・郡裁判所があります。
第一審裁判所(Juzgados de Primera Instancia)は、州レベルの第一審裁判所であり、民事・商事・刑事・不動産賃貸・家族等の案件を取り扱っています。 その他、下級裁判所・少額裁判所・治安裁判所・地方裁判所・郡裁判所は、州により管轄や名称が異なっており、一般には、一定の金額を超えない民事・商事事件、懲役刑に該当しない刑事事件を取り扱っています。
上級司法裁判所は、州における控訴裁判所であり、刑事、民事、商取引、家族、少年司法、刑事罰の執行、制裁の執行を取り扱っています。
⑵ その他の司法機関・行政司法機関
⑴で述べたもののほか、メキシコには特殊な事件を取り扱う裁判所等があります。主なものとして、労働裁判所・労働調停登録センター、連邦行政裁判所、行政審裁判所、高等農事裁判所・単独農事裁判所が挙げられます。
このうち、労働裁判所・労働調停登録センターは、労働者と使用者間に発生する労働紛争解決を担う機関であり、メキシコにおいて労働紛争は⑴の裁判所とは異なる裁判所や紛争解決機関にて解決されます。税務や行政訴訟に関しては行政裁判所である連邦行政裁判所が取り扱っており、地方の行政機関と私人との紛争に関しては行政審裁判所が取り扱っています。その他、土地などの境界や保有権、承継、返還、利用に関する紛争等に関しては単独農業裁判所が担当し、その上訴審として高等農事裁判所が存在します。