(1) 概要
タイでは、日本と異なり授権資本制度が採用されていません。そのため、新株発行にあたっては、その都度定款変更が必要となります。
新株発行手続きの具体的内容は、公開会社と非公開会社でそれぞれ異なりますが、いずれも、株主総会の特別決議に基づかなければならず、出席株主が有する議決権の4分の3以上の賛成が必要な点は共通です。
(2) 公開会社について
公開会社は、新株の全部または一部を、既存株主に対し、その持ち株数に応じて割り当てることができ(株主割当)、また、公募や特定の第三者への割り当て(第三者割当)も行うことができます(公開会社法137条)。また、新株発行にあたっては、株主総会の特別決議が必要です(同法136条)。
(3) 非公開会社について
非公開会社では、株式の公募や第三者割当を行うことはできません(民商法1102条、1222条)。非公開会社が新株を発行する場合には、まず、株主総会の特別決議を経た上で(同法1220条)、既存株主に対し、保有する株式数の割合に基づく割当てを申し出なければなりません(同法1222条1項)。なお、既存株主が新株を引き受けなかった場合には、これを取締役または他の株主が引き受けることができます(同条3項)。
このように、非公開会社では、原則として新株を既存株主にのみ割り当てることしかできませんが、以下の手順を踏むことで、事実上の第三者割当を実行することは可能であり、実務上も、事業拡大等にあたって第三者からの出資を受けたい場合等に活用されています。
すなわち、株主が事前に新株の割当て受ける権利を放棄することに同意している場合には、既存株主が第三者に対し株式の一部(1株でも可)を譲渡し、当該第三者を株主とすれば、新株発行の際に既存株主は新株の引受を放棄し、当該第三者にのみ新株を引き受けさせることが可能となります。