「ベトナムの新株発行手続きの概要」

(1) ベトナムの企業法制における企業形態

ベトナムの一般的な企業法制の下では、複数の企業形態があり、それぞれ異なる特性、組織構造を有しています。外国人、外国企業がベトナムで事業を立ち上げる際には、通常、有限責任会社(会社所有者である社員の人数によって、1人社員有限責任会社か2人以上社員有限責任会社があります。)または株式会社のいずれかの企業形態が選択されます。そこで、以下、これらの企業形態に関連する情報のみをご紹介します。

なお、株式の発行が認められているのは株式会社のみであり、有限責任会社では株式の発行が認められていません。したがって、会社が資金を調達して増資するためには、対応する企業形態の規定に応じた手続を行う必要があります。

(2) 有限責任会社の増資手続

① 1人社員有限責任会社の場合

1人社員有限責任会社とは、その名称のとおり、個人または組織1名だけの社員(会社所有者)を有する会社です。1人社員有限責任会社の場合、以下のいずれかの方法によって増資して資本を調達することができます。

単独所有者が追加出資する方法
他の個人または組織から資本を調達する方法
この方法によると、企業は、その企業形態を2人以上社員有限責任会社または株式会社のいずれかに組織変更する必要があります。

② 2人以上社員有限責任会社の場合

以下のいずれかの方法によって増資して資本を調達することが可能です。

現社員の出資比率に応じて拠出資本を増額する方法
増資額は、現在の出資比率に応じて現社員が出資しますが、追加出資する権利は、他の社員又は第三者に譲渡することができます。現社員が別途合意した場合を除き、増資分が全額出資されない場合、出資比率に応じて他の社員が出資しなければなりません。

  2. 他の個人または組織から資本を調達する方法

現社員の決定が承認された場合にのみ実施されます。

(3) 株式会社の増資手続

株式会社の場合、以下のいずれかの方法で、株式の数や種類を増やすことによって資金を調達することができます。

既存株主への株式提供
第三者割当増資
株式の公募
具体的には、i) 既存株主への株式提供を行うために、株式会社は、株式引受期限の15日前までに、全ての既存株主に書面で通知する必要があります。既存株主は、株式を購入する権利を他人に譲渡することができます。株主総会で別段の合意がない限り、取締役会は残りの株式を、既存株主に最初に提示した条件よりも有利でない条件で、他の株主やその他の第三者に売却することができます。

また、ii) の第三者割当増資を行うためには、マスメディアを通じて行わないこと、100名未満の投資家(プロの証券投資家を除く、またはプロの証券投資家のみを対象とする)に提供されること、という2つの条件を満たす必要があります。具体的には、株式会社が第三者割当増資に関する合意がない限り、株主は、既存株主に提示した条件よりも有利でない条件で、残りの株式を第る決定書を発行し、既存株主がi)の新株優先引受権を享受することが必要です。株主総会で別の三者に売却することができます。なお、第三者が外国人投資家である場合には、株式の買取りについて所轄官庁の投資認可を取得する手続きが必要となります。

公開会社(上場会社および非上場会社を含む)および株式発行の第三の選択肢(株式の公募)は複雑であるため、これらの事項については本ニュースレターの内容から除外しています。これらの詳細については、証券法をご参照ください。