(1) 新株発行の手続
株式発行は原則として株主総会の承認が必要です(会社法75条1項)。取締役は、事前に株主総会決議による承認を得なければ、株式の割当て権限を行使できません。また、株主総会で株式発行の承認が得られた場合、会社は14日以内に会社登記所に通知する義務があります(会社法76条1項)。一方で、既存の株主に対して保有株式の割合に従った株式の割当を申し出る場合には、株主総会の承認は不要です(会社法75条⑵a)。また、発起人に対して株式を割り当てる場合や、財産の取得対価として株式を発行する場合も同様に承認不要とされています(会社法75条⑵c・d)。
(2) 手続上の瑕疵がある場合の株式発行の有効性等
手続に違反して株式が発行された場合、発行は無効となり、既に払込が行われていれば払込金の返還が必要です(会社法75条⑷)。また、違反に関与した取締役は、会社および株式引受人に対して生じた損害を賠償する義務を負います(会社法75条⑸)。ただし、会社、株主、債権者などの利害関係者は、裁判所に株式発行の有効性に関する申立てを行うことができ、裁判所は正当性や公平性を考慮して株式発行を有効とする命令を出すことが可能です(会社法108条)。
(3) 既存株主の株式引受権
既存株主の株式引受権について、会社法は既存株主の保護規定を設けています。新たに発行される株式の割当ては、まず既存株主に対し、保有割合に従って行わなければなりません(会社法85条⑴)。会社は、期限を定めて株式割当の申出通知を行い、株主が期限内に回答しなかった場合、取締役は最適な形で第三者に株式を割り当てることができます(会社法85条⑵⑶)。ただし、定款でこの規定の適用を排除することができます(会社法85条⑴)。