「バングラデシュにおける懲戒処分の種類・内容・手続きに関する法規制の概要」

バングラデシュ労働法及びEPZ労働法において、懲戒の種類、懲戒の理由、手続きが定められています。

(1) 懲戒処分の種類(労働法23条2項)

① 退職(懲戒解雇と異なり、勤務年数に応じた補償金が支払われます)

② 1年を超えない期間の降格・減給

③ 1年を超えない期間の昇進の保留

④ 1年を超えない期間の昇給の保留

⑤ 罰金

⑥ 7日を超えない期間の賃金または特別手当なしの停職

⑦ 厳重注意および警告

(2) 懲戒の理由(労働法23条1項、4項)

使用者は、労働法で定められた懲戒処分の対象となる不正行為が、労働法24条の手続きで認められた場合、懲戒理由とすることができます。また、懲戒解雇に限り、犯罪行為で有罪になった場合も懲戒理由とすることができます。

懲戒処分の対象となりうる不正行為は次のとおりです。(労働法23条4項)

① 上長からの適法又は正当な指示に対して、個人又は複数で故意に従わないこと

② 事業や使用者の資産に関連した窃盗、横領、詐欺、不正行為

③ 業務に関連した贈収賄

④ 常習的及び一度に10日を超える無断欠勤

⑤ 常習的な遅刻

⑥ 常習的なルール違反や規則違反

⑦ 事業所における無秩序、暴動、放火、破壊行為

⑧ 常習的な職務怠慢

⑨ DIFEから承認を受けた、業務遂行や規律を含む雇用に関するルールの常習的な違反

⑩ 使用者の公的な記録の改変、偽造、不当な変更、損傷、損害をもたらすこと

(3) 懲戒の手続き(労働法24条)

まず、使用者は、不正行為と思料される事実を記載した書面を作成します。(労働法24条1項a)。次に、労働者に対して同書面を交付して7日以上の釈明する期間を与えます(同項b)。その期間内に、労働者に聴聞の機会を与えます(同項c)。労働者の釈明により不正行為がないと使用者が判断した場合はその時点で手続きは終了し、本行為について以後不問とされます。釈明しても疑義が解消されない場合は、同数の使用者代表者及び労働者代表者で構成された調査委員会を立ち上げて、60日以内で調査を行います(労働法24条1項d、労働規則25条1項)。

調査委員会の調査の結果、不正行為が認められた場合、使用者は、懲戒処分の決定を行うことができ(労働法24条1項e)、懲戒処分の決定を労働者に対して書面にて通知します(労働法24条8項)。

(4) EPZ労働法及びEPZ労働規則

EPZ内で適用されるEPZ労働法及びEPZ労働規則においても、懲戒についてはおおむね同様の内容が定めらています(EPZ労働法21条、EPZ労働規則23条乃至26条)。

懲戒の対象となる不正行為には、(2)の①乃至⑩に加えて次の項目が追加され、より具体的かつ詳細になっている点が特徴です(EPZ労働規則23条j乃至r)。

① 使用者の公式記録を改ざん、不当に改変、損傷、または紛失させること

② 工場の禁止区域での喫煙

③ 会社、企業、工場、またはEPZ内で薬物を摂取または消費し、秩序を乱す行為

④ 性的嫌がらせまたは身体的暴行

⑤ 使用者の同意なしに、会社、企業、または工場の敷地内で何らかの目的で募金活動またはキャンペーンを行うこと

⑥ 氏名、年齢、学歴、前職について虚偽の情報を提供すること

⑦ 求人応募に虚偽の情報を提供し、証明書を偽造すること

⑧ 会社、企業、または工場の敷地内で金銭を貸し借りしたり、金融業務を行ったりすること

⑨ 適切な当局の承認なしに、会社、企業、または工場の敷地内でチラシ、パンフレット、またはポスターを配布または掲示すること