「メキシコにおける懲戒処分の種類・内容・手続きに関する法規制の概要」

⑴ 懲戒処分の種類

メキシコでは、連邦労働法に懲戒処分の規定があります。

同法によれば、懲戒処分としての停職は8日間を超えてはならない旨や、懲戒処分を受けようとする労働者は事前に意見を述べる権利を有する旨が規定されています(連邦労働法第423条)。

他方、使用者が労働者の給与を減額した場合、労働者は雇用契約を終了させることが可能であり、補償金を受け取る権利があるとされています(同法51条)。

⑵ 懲戒解雇について

使用者は、以下の正当な事由がある場合は、いつでも雇用関係を終了させることが可能とされています(同法47条)。

  1. 労働者が就労の際に虚偽を用いた場合(ただし、就労の開始から30日以内に限る)
  2. 自衛行為を除き、労働者が業務中に不正行為または脅迫、侮辱等を含む暴力的行為を行った場合
  3. 労働者が同僚に対し職場の規律を乱すような不正行為または脅迫、侮辱等を含む暴力的行為を行った場合
  4. 業務時間外において、労働者が使用者、顧客や取引先、またはその家族に対する正当な理由のない脅迫、侮辱等を含む暴力的行為を行い、その結果、雇用関係を維持することが困難となった場合
  5. 労働者が、業務中、故意に建物、機械、原材料等業務に関する物体に被害を与えた場合
  6. 労働者が重大な過失によって建物、機械、原材料等業務に関する物体に影響を与えた場合
  7. 労働者に不注意による職場の安全を脅かす行為があった場合
  8. 労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントやいじめ等の非道徳的行為を行った場合
  9. 労働者が企業秘密や守秘義務を負う情報について漏洩した場合
  10. 労働者に30日間のうち4日以上の正当な理由のない欠勤があった場合
  11. 労働者が正当な理由なく業務命令に従わない場合
  12. 労働者が職場における安全規則に従わない場合
  13. 労働者に職場での酩酊または薬物の使用があった場合(ただし、薬物の使用について、労働者が事前に使用者に対して医師の診断書をもって使用を申請していた場合を除く)
  14. 労働者が懲役刑に処された場合
  15. 労働者に起因する事由によって、就労に必要な書類が欠如しており、使用者がこれを知ってから2か月を経過しても改善されない場合
  16. その他これらに類する重大な行為があった場合

使用者は当該労働者に対して、当該事由およびその事由が発生した日付や期間を記した書面によって解雇を即日かつ直接通知するか、解雇日から5営業日以内に管轄の労働裁判所に当該労働者の住所とあわせて届け出る必要があります。この場合、使用者に代わって当該労働裁判所が労働者に当該解雇通知を送達することとなり、労働者が通知を受け取った時にこの解雇の効果が生じることになります。