「日本における内部通報者保護制度の概要」 

(1) 公益通報者保護法の概要

公益通報者保護法は、国民生活の安全や社会経済の健全な発展の観点から、公益のために事業者の法令違反行為を通報した当該事業者内の労働者、退職者、役員の保護を図っています。

労働者、退職者、役員は、不正の目的でなく、自身の勤務先における不正行為を、一定の要件の下で通報することができます。また、同法は、公益通報をしたことを理由とした解雇の無効、降格・減給等の不利益取扱いの禁止する等して、通報者を保護しています。

 公益通報者保護法上の通報先と要件は以下のとおりです(同法3条1項)。

また、公益通報者保護法は、事業者に対し、公益通報を受け、当該通報対象事実の調査をし、その是正に必要な措置をとる業務(次条においてに従事する者(公益通報対応業務従事者)を定めることや公益通報に適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を義務付けています(同法11条1項、2項)。なお、この義務は、常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者については努力義務とされています(同条3号)。
(2) 会社法上の内部統制システム構築義務
また、上記内部通報者保護法の規定のほかに、会社法上、大会社(資本金が5億円以上または負債の額が200億円以上の会社)の取締役設置会社については、内部統制システム構築義務があり、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備が求められます(会社法362条4項6号、5項)。
 取締役が内部統制システムの構築を怠るなどした場合には、任務懈怠として会社に対して損害賠償責任を負う可能性があります。