「インドにおける倒産法制度に関する法令の概要」

⑴ 倒産手続き申立ての要件

 インドでは、破産倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016)が倒産手続きについて定めています。

 同法上、倒産手続き申立ての要件として、債務者が10万ルピー以上の支払不履行(デフォルト)に陥っていることが必要とされています。

 申立てができるのは、①金融債権者(Financial Creditor)、②取引債権者(Operational Creditor)、③債務者自身であり、会社法審判所(National Company Law Tribunal)に対し申立てを行います。

(2) 倒産手続きの流れ 

 会社法審判所は、手続きを開始する場合、モラトリアムを発令します。モラトリアム発令中は、債務者の資産を保全するために、債務者に対する訴訟手続き、担保権の実行、債務者による資産の処分等が禁止されます。

 また、会社法審判所は、手続開始決定から14日以内に暫定再建専門家(Interim Resolution Professional)を選任します。暫定再建専門家の役割は会社資産の保全であり、その任期は30日間とされています。暫定再建専門家が選任されると、債務者である会社の取締役会の権限は停止され、暫定再建専門家が経営権を獲得します。暫定再建専門家は、債権者からの債権届を受理し、債権者リストを作成し、債権者委員会を組成します。

 債権者委員会は、全ての金融債権者を構成員とし、最初の会議で、暫定再建専門家の職務を引き継ぐ再建専門家を選任し、再建専門家は、債務者の債権債務関係等の情報をまとめたインフォーメーション・メモランダムを作成し、これに基づき再建計画が策定されます。

 債権者委員会が再建計画を承認した場合、同計画に基づいて会社再建が行われます。他方、債権者委員会が再建計画を承認しなかった場合は、清算手続きに移行します。

(3) 清算手続き 

 会社を清算する場合、以下の債権については優先弁済を受けられます。具体的な優先順位は以下のとおりです。

 ①清算費用

 ②清算手続開始日から24か月前までのワークマンに対する債務、担保権を放棄した担保付債権者に対する債務

 ③清算手続開始日から12か月前までの従業員(ワークマンを除く)に対する債務

 ④金融債権者の無担保債務

 ⑤清算手続開始日から2年前までの中央政府または州政府に対する債務、担保権を有する債権者に対する担保権実行後の残債務

 ⑥その他の債務

 ⑦優先株主に対する残余財産配分債務

 ⑧株主及び共同経営者に対する残余財産配分債務