(1) 倒産法の概要
タイでは、債務超過にある個人や法人を清算するための手続き(破産手続き)と、債務者である法人の事業の再建・更生を目的とする手続き(事業更生手続き)が存在します。
タイにおける倒産制度の特徴として、破産手続きにおいては、債務者自身からの破産宣告の申立てが認められていない点や、管財人が民事執行局という公務員から選任されるという点が挙げられます。
(2) 倒産手続きの主な流れ
ア 破産手続きについて
タイの破産手続きついては、破産法にその定めがあり、主に以下のような流れを経て、破産手続きが進行します。
まず、同法においては、債務者が、①債務超過であること、②債権者に対する債務の合計額が、債務者が自然人の場合は100万バーツ超、法人の場合は200万バーツ以上であること、③債務額を確定できることが破産宣告原因と規定されています(破産法9条)。
その後、裁判所において破産宣告の原因が存在すると判断された場合、裁判所は財産保全命令を発令し(同法14条)、管財人を選任します。選任を受けた管財人は、速やかに債権者集会を招集し(同法31条1項)、同集会において、裁判所に対して破産の申立てを行うか否かを検討します。同集会において、破産宣告を求める決議がなされれば(同法61条)、その結果を踏まえ、裁判所が破産宣告をします。
破産宣告後、管財人は、債権者への配当を行い(破産法124条)、債権者は破産手続き内で弁済請求を行ったうえ破産配当を受けることになります。
イ 事業更生手続きについて
事業更生手続きについても、破産法に定めがあり、主に以下のような流れを経て、事業更生手続きが進行します。
まず、同法においては、債務者(非公開会社、公開会社およびその他規則により規定された法人)が、①債務超過であること、②債権者に対する債務の合計額が、1,000万バーツ以上であること、③事業更生の合理的な見込みがあることの要件を満たす場合には、債権者、債務者または監督庁が、裁判所に対して、事業更生の申立てを行うことが可能です。(破産法90/4条)。この点、事業更生手続きにおいては、破産手続きと異なり、債務者自身による申立ても可能とされています。
裁判所が申立てを受理した後、裁判所は、事業更生手続開始の要件が充足されているか審理し、理由があると認められる場合には、事業手続開始決定を行います(破産法90/10条)。開始決定時または開始決定後の一定の手続を経たのち、裁判所は更生計画作成者を選任し(破産法90/17条)、更生計画の提出を受けた管財人が更生計画の承認を判断するため債権者集会を招集することになります(破産法第90/44条)。債権者集会の承認を受けた更生計画は、裁判所が当該計画を承認するか否かを決定し、更生計画を実行することになります。更生計画の遂行予定期間が経過し、計画が遂行されたと判断された場合には、更生手続廃止決定がなされることになり(破産法90/70条)、これにより更生手続きが終了します。