「ベトナムにおける倒産法制度に関する法令の概要」

(1) 倒産法および制度の概要

 「企業法」第59/2020/QH14号の第214条では、企業の倒産は倒産に関する法律の規定に従って行われると規定しています。2014年「破産法」第4条第2項によると、倒産とは、企業が支払い不能に陥り、人民裁判所によって破産を宣告された状態を指します。倒産状態にある企業とは、支払期日から3か月以内に債務を履行できない企業であることに注意が必要です。

⑵  倒産手続開始の申立をする権利および義務を有する者

 倒産手続開始の申立をする権利および義務を有する者には、以下が含まれます。

  • 無担保債権者、支払期日から3ヶ月経過後の一部有担保債権者
  • 従業員、労働組合
  • 企業の法定代理人
  • 個人事業主、株式会社の取締役会長、2名以上の有限責任会社の社員総会会長など
  • 普通株式の20%以上を連続して6か月以上所有する株主または株主グループなど

⑶ 管轄機関

 地区レベルの人民裁判所は、その省または市の地区に本社を置く企業の倒産処理を行う権限を有します。省レベルの人民裁判所は、その省で事業登録をし、以下のいずれかに該当する企業の倒産処理を行う権限を有します。

  • 海外に資産がある、または倒産手続に参加する者が海外にいる場合
  • 企業が複数の地区、町、市に支店や代表事務所を持つ場合
  • 企業が複数の地区、町、市に不動産を所有している場合
  • 事件が複雑であるため、省レベルの人民裁判所が処理を引き受ける場合

⑷ 手続

①倒産手続開始の申立:倒産手続開始の申立を行うことができるのは、上記の関連権利および義務を持つ者に限られます。

②裁判所による申立の受領:倒産手続開始の申立を受領後、裁判所は申立内容を審査します。申立が有効であれば、申立者に対し、手数料の支払いおよび倒産手数料の前払いを通知します。

③裁判所による申立の正式受理:人民裁判所は、倒産手数料の支払いの受領および倒産費用の前払いの受領後、倒産手続開始の申立を正式に受理します。その後、裁判所は倒産手続を開始するか否かの決定を下します。

④倒産手続の開始:倒産手続の開始または不開始についての裁判所の決定は、関係者に通知しなければなりません。

⑤債権者会議:債権者会議は、倒産手続の中止、事業再建策の提案、破産宣告の提案のうち、いずれかの結論を下す権利があります。

⑥企業の破産を宣告する決定書の発行:企業が事業再建計画を実施できない場合、または事業再建計画の実施期限が過ぎても支払い不能状態が続く場合、裁判官は企業の破産を宣告する決定書を発行します。⑦倒産処理の執行:倒産処理には、倒産資産の清算、企業資産の売却による収益の対象者への分配(資産分配の優先順位に従う)が含まれます。