⑴ 倒産に関する法律と制度の概要
メキシコの倒産制度は主に商業倒産法(Ley de Concursos Mercantiles:LCM)によって規定されており、企業の財務的困難や倒産に対応するための法的枠組みを提供しています。LCMは、財政的に困難な状況にある企業の存続を図りながら、債権者の公平な取り扱いを確保することを目的としています。
メキシコシティには、倒産事件を管轄する特別連邦裁判所が2か所あり、LCMに基づき手続きを監督します。また、連邦商業倒産専門機関(Instituto Federal de Especialistas en Concursos Mercantiles:IFECOM)は、倒産手続の円滑な運営を支援するため、専門家の認定や技術的監督を行い、公正な倒産手続きを促進します。
⑵ 倒産手続の段階
企業は、支払い義務を履行できなくなった場合、倒産状態にあるとみなされます。LCMの規定では、企業が以下の条件を満たした場合、倒産状態(concursos mercantiles)であると判断されます。
・ 企業が支払不能の状態にあり、総債務の35%以上について30日以上の延滞がある場合。
・ 申請時点で、負債の80%以上を支払うのに十分な資産を有していない場合。
LCMでは、倒産手続について、2つの主要な段階を定めています。
① 再生手続(Conciliación)段階
この段階の主な目的は、企業の債務を再構築し、債務者と債権者の間で合意を交渉して財政的安定を回復することです。裁判所に任命された調停人が債権者と債務者の交渉を仲介します。交渉が成功し、裁判所の承認を得られた場合、企業は倒産手続から抜け出すことが可能です。和解手続の期間は通常185日間ですが、最大365日まで2回の90日延長が認められています。
② 清算手続(Quiebra)段階
和解が成立しない場合、裁判所は企業を倒産と宣告し、清算手続が開始されます。裁判所が任命した管財人が資産の売却を監督し、法律で定められた優先順位に基づいて債権者への分配を行います。企業の資産は清算され、労働債権(従業員への賃金や福利厚生の未払い分)、担保付債権者(抵当権や質権を有する債権者)、無担保債権者の順に返済されます。
⑶ 倒産手続の影響
倒産が宣言されると、債務者に対するすべての司法執行や債権回収行為が一時的に停止されます。また、和解手続き中は、企業の経営陣はそのまま存続できますが、財務運営については調停人の監督下に置かれることがあります。進行中の契約は、裁判所の承認を得て再交渉、解除、または継続される場合があります。