「アラブ首長国連邦(ドバイ)における意匠制度の概要」

(1) 概要

 アラブ首長国連邦(UAE)では、産業財産権の規制と保護に関する法(2021年法連邦法第11号)において意匠について規定されています。同法は、フリーゾーンを含むUAE全域に適用されます。

 意匠とは、装飾的・審美的な二次元または三次元の創造物で産業または工芸製品に用いられるものと定義されます(第1条)。意匠権として保護されるには、新規性及び公序良俗に反しないことが要件とされ(第43条1項、2項)、経済省所管の登録簿に登録されねばなりません(第40条)。出願前1年以内の公開は新規性があるとみなされ(第43条4項)、UAEと協定・合意を有する国で出願したことによる優先権の主張は、最初に出願した日から6か月間とされます(第42条)。

(2) 登録手続

 出願は、意匠の名称等の所定事項を記載した申請書に意匠の図面等の必要書類を添えて提出することにより行います。意匠の説明はアラビア語及び英語で記載されねばならず、出願人が法人の場合の商業登記簿、意匠製作者でない場合の権利譲渡証明書、出願代理人の委任状等には公証を要します(施行規則にかかる閣議決定2022年第6号(以下「施行規則」といいます。)第57条)。出願手数料の支払後、施行規則第63条第1項記載の要件が満たされるかにつき形式審査されます。拒絶のときは理由が示され、再審査の機会が与えられます(施行規則第63条2項、3項)。資料の追加を求める通知から90日以内に出願人が追完しないときは、出願を取り下げたものとみなされます(第49条)。審査通過の通知後60日以内に公開手数料及び権利付与手数料を支払うことにより、意匠の登録は知財公報に掲載され、公報から90日後に登録証明書が発行されます(施行規則第41条、第44条)。

(3) 意匠権の内容

意匠権は、毎年の登録維持料を支払うことにより、出願日から20年間存続します(第45条第1項)。

登録された意匠は、第三者による製品製造における使用並びに意匠に関する商品の輸入、商業的目的の使用のための保管、販売のための展示及び販売が禁止されることにより、保護されます(第46条)。意匠権の侵害に対しては、裁判所における損害賠償(第67条)、侵害した製品等の差押命令(第68条)を請求することができ、裁判所は、差押した製品の他、侵害品及びその製造機具の没収、並びに判決の新聞広告掲載を命ずることができます(第70条)。また、不正確または虚偽の書類を用いて出願をした者や意匠権を侵害した者は、禁固及び10万UAEディルハム以上100万UAEディルハム以下の罰金、またはそのいずれかにより処罰される可能性があります(第69条)。