「バングラデシュにおける意匠制度の概要」

⑴ 概要

バングラデシュでは、バングラデシュ意匠法(Bangladesh Industrial Design Act, 2023)により、意匠の保護が規定されています。この法律で「意匠」とは、製品の特長的な形状、線、色、視覚的な表面などの美的な視認性と定義されています(以下、断らない限りバングラデシュ意匠法の条文番号を意味します。第2条(m))。

バングラデシュは、パリ条約に加盟しており、これに基づく優先権主張が可能です。

⑵ 保護対象・新規性・申請権

意匠は、新規性と独自性があり、産業的に生産または使用できる場合に登録可能です(第5条第1項)。

ただし、技術的・実用的な側面のみを重視した意匠、公序良俗に反する可能性がある意匠、未登録の意匠、国章などを模した意匠は保護対象外となります(第4条)。

「新規性」は、出願日または優先日前に世界において公開されていない場合、複合製品の場合は通常の使用中に見える部分である必要があります(第5条第3項)。たとえ出願前に公開された場合でも、申請者の許可がない公開の場合は、新規性の判断に影響しません(第5条第4項)。

登録の権利は、原則として意匠の所有者またはデザインをした者に帰属します。共同作成の場合は共同所有となり(第6条第2項)、この権利は譲渡や相続が可能です(第6条第3項)。

⑶ 保護期間

登録された意匠は、出願日または優先日から最長10年間保護されます(第15条第1項)。

この保護は5年ごとの更新が可能で、最大3回まで延長できます(第15条第2項)。登録の有効期限が切れた場合でも、追加料金を支払えば6か月の猶予期間が設けられています。

⑷ 登録手続

申請者は、所定の申請書などを工業省特許意匠商標局(Department of Patents, Designs & Trademarks, Ministry of Industries「DPDT」)に提出して手続きを開始します(第7条第1項)。

また、パリ条約締約国で申請してから6か月以内であれば、優先権を主張することもできます(第8条)。

申請後、その内容はWEB上に30日間掲載され、第三者から異議がないか確認されます(第10条)。

その後、DPDTが、新規性・独自性・産業上の利用可能性について審査を行います(第11条第1項)。不備があった場合、申請者は2か月以内に修正する必要があります(第11条第3項)。

審査基準を満たし、異議もなければ、登録が認められ、証明書が発行されます(第12条第1項)。却下された場合は、申請者に通知されます(第12条第2項)。

⑸ 意匠権侵害

登録された意匠または類似する意匠を、同一または類似の商品・サービスに使用した場合、混同や誤認を引き起こした場合には、侵害と見なされます(第21条)。使用には、製造、販売、輸入などが含まれます。(第2条(p))

侵害が起きた場合、所有者はDPDTに対し行政補償を求めることができ、行政は補償金の支払い命令や、関連製品・材料の没収命令が出すことができます(第22条)。

補償が支払われない場合は、裁判所に訴訟を起こすことが可能です。裁判所は、補償金の支払いや、さらなる侵害を防ぐための差止命令を出すことができます。また、偽造品の破壊や押収、さらには損害賠償も命じることもできます(第23条)。