「タイにおけるインサイダー取引規制の概要」

(1)  インサイダー取引について

 インサイダー取引については、証券取引法にその規定があります。

 同法によれば、「インサイダー情報」とは、一般に公に開示されていない情報であって、有価証券の価格または価値の変動に重要な影響を及ぼす情報をいうと規定されています(証券取引法第239条)。

 そのうえで、証券取引法は、一定の場合を除き、インサイダー情報を知っている者または保有している者が、自己または他人のために証券の売買やデリバティブ取引を行うことを禁止しています(証券取引法第242条1項)。また、相手方が、インサイダー情報を使って証券取引を行うことを知っている、または合理的に知り得る場合には、当該相手方にインサイダー情報を直接または間接的に伝達することも禁止しています(同条第2項)。

 なお、証券取引法によれば、会社の取締役やその他の内部者においては、インサイダー情報を保有している者と推定され(証券取引法第243条)、またその近親者が、通常の取引とは異なる証券取引を行った場合には、インサイダー情報を保有していた者と推定されます(同法244条)。

(2)  インサイダー取引を行った場合の罰則

 証券取引法上、取締役その他インサイダー情報を開示した者と、当該インサイダー情報を証券取引に利用した者の双方に対して、懲役または罰金刑の刑事罰が存在します(証券取引法第296条)。また、他人に自身の名義の証券口座を使用させる等の名義貸し行為についても同様の刑事罰が課せられています。

 その他、裁判所から、証券取引等の停止等の命令がなされることもあります(証券取引法第297/1条)。