バングラデシュは、2022年証券取引委員会規則(the Securities and Exchange Commission (Prohibition of Insider Trading) Rules, 2022)によってインサイダー取引が規制されています。同規則は、1969年証券取引条例(the Securities and Exchange Ordinance, 1969)、2012年マネーロンダリング防止法(The Money Laundering Prevention Act, 2012)と関連しています。
⑴ インサイダー取引の定義
インサイダー取引とは、証券取引委員会規則1条1項(n)で定義されており、「未公開の価格に敏感な情報に基づいて、受益者がファンドの証券またはユニットの購入、売却、またはその他の方法で譲渡する」こととされます。ただし、裁判所の命令、相続、または死亡した人からの没収によって行われた譲渡は含まれません。(同号但書)
受益者とは、同項(l)で定義されており、次の4つのカテゴリに該当する者、および、これらの該当する者から地位、関係などを通して価格に敏感な情報を知る機会がある者と定義されます。役員、取締役、従業員、近親者、さらに支配関係のある利害関係人、利害関係機関(同項(p))も含まれるため、定義上はかなり広範な範囲が対象となります。
・ 会社の取締役、スポンサー、大株主、経営代理人、銀行など
・ 会社のファンドマネージャーやファンドの保管などの契約に関する当事者であり、信用格付け会社、コンサルタントなど
・ 一般的な株式ブローカー、株式ディーラー、市場仲介者など
・ 金融商品の規制当局など
「価格に敏感な情報」とは、同規則3条1項で、定義されており、財務諸表や財務結果などの財務の基本的情報、配当に関する情報、合併などの企業構造に関する情報、資本構成の変更に関する情報、事業の拡大に関する情報、ファンド運用の情報、規定された委員会が価格に敏感な情報として定めた情報、および、同委員会が官報に掲載して指定する情報などの8種のカテゴリに含まれる情報が対象となります。
⑵ 禁止される行為
受益者または関連者が、直接的または間接的にインサイダー取引に関与したり、そのような取引を支援する、情報を提供したりすることは禁じられています(同法5条1項)。また、会社のスポンサー、取締役、主要な従業員、監査人、コンサルタント、および関係者などは、会計年度末の2か月前から取締役会による財務諸表の最終承認までの間、会社の株式、ファンドなどの取引はできません。(同法5条2項)
さらに、2012年のマネーロンダリング防止法 第2条(cc)(25)により、インサイダー取引を規制対象としているため、このような行為があった場合、金銭的利益が犯罪収益としてみなされ、調査、資産の差し押さえ、および起訴の対象となります。