「マレーシアにおけるインサイダー取引規制の概要」

(1)  インサイダー取引について

 マレーシアにおけるインサイダー取引は、2007年資本市場・サービス法(Capital Markets and Services Act 2007、以下「CMSA」といいます)によって規制されています。CMSAによれば、インサイダー(insider)とは、以下の条件を満たす者を指します(CMSA188条⑴)。

a. 一般に入手可能でない情報を保有しており、その情報が公に知られるようになった場合に、合理的な一般人をして、当該情報によって証券の価格や価値に重要な影響を及ぼすと考えられる情報であること。

b. 当該情報が一般的に入手不可能であることを知りまたは合理的に知り得べき立場にあること。

 なお、インサイダーという用語は、通常、会社や証券取引所の役員、代理人、従業員を指しますが、裁判例(R v Evans & Doyle[1999]VSC 488事件)によれば、会社と無関係の第三者であっても該当する可能性があります。

(2)  規制内容

 インサイダーは、当該情報に関連する証券について、次の行為を行うことが禁止されています(CMSA188条⑵)。

 当該証券の取得または処分、あるいはそれを目的とした契約の締結

 直接的または間接的に、他人による取得や処分、またはそれを目的とした契約の締結をあっせん・助長すること

 さらに、当該情報に関連する証券が証券取引所において取引可能なものである場合には、インサイダーは当該情報を他人に伝達したり、そのような伝達を引き起こしたりすることが禁止されています(CMSA188条⑶)。

(3)  罰則

 CMSAは、インサイダー取引に対して厳格な罰則を定めており、違反者は、最長10年の懲役および最低100万リンギット(RM1,000,000)の罰金が科される可能性があります(CMSA188条⑷)。