(1) インサイダーに関する法律の概要
メキシコにおけるインサイダー取引の規制は、主に証券市場法(Ley del Mercado de Valores:LMV)に基づいて行われます。LMVは2005年に制定された連邦法であり、証券市場を公正、効率的かつ透明性の高い方法で発展させること、投資家の利益を保護すること、システミックリスクを最小限に抑えること、および健全な競争を促進することを目的としています。
(2) インサイダー情報の保有者に該当する者
インサイダー情報を保有しているとみなされる者の範囲は、主に以下のとおりです。
・ 株式等の発行元企業の内部関係者(取締役、監査役、CEO、重要役員、外部監査人など)
・ 当該企業の資本の10%(特定の場合は5%)以上を直接的又は間接的に保有する者または、その者が属する法人の内部関係者
・ 発行元企業と密接な関係を有する法人の役員や監査人
・ 発行元企業に対して重要な影響力を持つ者
・ 発行元企業に対して指揮権限を有する者
・ 上記の者と密接な関係を有する配偶者、親族、共同所有者、またはこれらの者と接触があった者
これらの者は、取得した情報について守秘義務を負っており、職務・地位・委任等に基づき正当な理由がある場合を除き、当該情報を使用したり第三者に伝達したりしてはなりません。なお、出資比率を計算する際には、親権下にある者が保有する株式や、信託に帰属し、信託者または受益者として関係する株式も含まれます。
(3) インサイダー取引として禁止される行為
インサイダー情報を保有する者は、以下の行為が禁止されています。
・ 株式等の発行元企業が発行する有価証券や、それを表す証券、またはその価格や相場がインサイダー情報の影響を受ける可能性がある金融派生商品(オプション証券やデリバティブ等)について、当該情報が公開されていない間に、直接または間接に売買やその指示を行うこと。
・ 当該インサイダー情報を職務上知る必要がある場合を除き、他人に提供または伝達すること。
・ 発行元企業が発行する有価証券や、それを表す証券、またはこれらを原資産とする金融派生商品について、情報がインサイダー情報である間に、投資判断に影響を与えるような助言や推奨を行うこと。
インサイダー情報を利用して行われた取引の相手方は、裁判所に対して損害賠償を請求することが可能です。この請求権は、取引が行われた日から5年間で時効となります。なお、メキシコ国外で行われた取引であっても、国内に何らかの影響を及ぼす場合には本法の適用対象となり、処罰の対象となることがあります。