(1) 基本定款の必要的記載事項
メキシコの会社設立については、商事会社一般法(Ley General de Sociedades Mercantiles。以下「会社法」)に規定されており、定款に関する事項も同法に定められています。
すべての会社形態で必要となる定款の記載事項は、会社を設立する者の氏名・国籍・住所、会社が営む事業の目的、商号、存続期間(無期限と記載することも可能)、資本金の金額、各出資者(株主または社員)の出資内容(金銭出資または現物出資/その評価額および評価基準)、会社の所在地、会社の管理運営の方法、取締役の権限、取締役の選任および会社の署名権者の指定、株主間の利益および損失の分配の方法、準備金額、会社が存続期間満了前に解散する場合に関する条項、会社の清算を行う基準および清算人を事前に定めていない場合の選任方法です(会社法第6条)。
また、株式会社の定款においては、株式の数、額面価額、分割された株式の性質、監査役の選任、通常総会の権限およびその審議の有効性のための条件、株式の条件(無議決権・拒否権付き等の種類株)、取締役の限定責任等の記載が要求されます(会社法第91条)。
さらに、外資系企業の場合はいわゆるカルボ条項を定款に含めることを要求されます。カルボ条項とは、当該会社の外国人株主等はその出資およびそれから派生する権利一切に関して内国民と同等の扱いを受けること、それに関して自国政府の保護を求めないこと、これに違反した場合には当該権利等をメキシコ国に没収されることに同意するという条項です。
(2) 定款の変更
定款の変更には、社内の決議手続と公的手続の二段階が必要です。
株式会社(S.A.)では、定款の変更は特別株主総会の決議事項とされています(会社法第182条)。臨時総会で定款変更を決議するには、定足数として第1回招集で発行済株式総数の少なくとも75%以上の出資に相当する株主の出席が必要で、議決要件は総株主の株式数の50%以上による承認です。ただし、定款でそれ以上の多数を要求することも可能です。第1回総会が流会した場合、第2回招集では定足数の要件は適用されませんが、総株式数の50%以上の賛成が必要です。
合同会社(S. de R.L.)では、定款の変更は、会社の最高機関である社員総会の決議事項とされています。定足数は資本金の半分に相当する持分の出席で、決議は出席社員の過半数で成立します。第1回総会で可決に至らない場合は再招集ができ、第2回以降の総会では出資額にかかわらず、出席社員の過半数による決議が可能です。ただし、定款で、より厳格な要件を定めることも認められています。
社内で定款変更が決議された後は、その内容を公的に認証する必要があります。設立時と同様に、定款変更も公証人の立ち会いのもとで記録されます(会社法第5条)。