(1) 定時株主総会での取締役の任免
タイ民商法典(以下、「CCC」)上、取締役の任免は株主総会においてのみすることができるとされています(CCC第1151条)。また、毎年の定時株主総会では、全取締役の3分の1の取締役が退任しなければならないとされています。3分の1に分割できない場合は3分の1に最も近い数の取締役(全取締役が5人であれば2人、全取締役が2人であれば1人)が退任する必要があります(CCC第1152条)。
一般的に、毎年の定時株主総会にて3分の1の取締役が退任し、退任した取締役と同人数の取締役を新たに選任するという手続きが繰り返されることになります。この際、退任した取締役が再任することは可能です。
(2) 任期途中での取締役の解任、新たな取締役の選任
取締役の任期途中で取締役を解任し、新たに取締役を選任する場合には、以下の手続きを行う必要があります。
(a)取締役会決議
CCC上、取締役の選任、解任については、取締役会決議事項とは定められていません。したがって、原則、取締役会決議は不要です。しかし、会社の附属定款において、取締役の選任、解任について取締役会決議事項と定められている場合には、当該附属定款の定めに従い、取締役会決議を経る必要があります。したがって、会社の附属定款の内容を確認する必要があります。
(b)株主総会決議
上述のとおり、取締役の任免は株主総会においてのみすることができるとされており、株主総会の普通決議事項として定められています。したがって、臨時株主総会を開催し、取締役の任免について株主総会決議を経る必要があります。
(c)商務省における登記手続き
取締役に関する情報は会社の登記事項とされ、株主総会で選任された新たな取締役の情報については、商務省事業開発局(DBD)にて登記手続きを行う必要があります。この登記手続きは、当該取締役が選任された日から14日以内に行う必要があります(CCC第1157条)。
DBDにおける登記手続きについては、DBD申請書類に必要事項(新任・前任の取締役の氏名、新任取締役の住所情報等)を記載の上、DBDに提出する必要があります。また、新任取締役のパスポートコピーも提出する必要があります。申請書類は全てタイ語での記載となり、DBDへの申請手続きを代行する会社に申請手続き委任をする場合には、委任状(POA)の作成も必要となります。
(3) 選任された取締役の任期
株主総会において、取締役を任期満了前に解任し、その代わりに別の取締役を選任した場合には、当該新任取締役の任期は、解任された取締役が有していた残りの任期までとなります(CCC第1156条)。