(1) 取締役の交代に関する法制度
メキシコにおける株式会社(Sociedad Anónima, S.A.)などの企業形態は、主にメキシコ一般会社法(Ley General de Sociedades Mercantiles、以下「会社法」)によって規定されています。会社法上、取締役はAdministrador(アドミニストラドール)と呼ばれ、取締役が1名のみの場合は唯一代表取締役となり、2名以上いる場合は取締役会が設置されます。取締役就任には、国籍や居住地についての法令上の制限はなく、社員であっても第三者であっても構いません。また、取締役が3名以上の場合には、定款において少数株主の取締役選任権を規定する必要があり、資本金の25%以上の株式を有する株主は、少なくとも1名の取締役を選任できるようにしなければなりません。公開株式会社の場合、この割合は10%に引き下げられます。
取締役の選任および解任の権限は、会社法により株主総会に専属すると定められています。株主総会は原則として出席株主の過半数決議で取締役の選任および解任を行うことができ(定款で別段の定めがある場合を除く)、会社法により、少なくとも年1回、定時株主総会(通常総会)を開催して取締役の選任、再任または交代を行う必要があります。株主総会で選任された取締役の任期は定款により定められます。取締役は、任期が満了した後であっても、新たに任命され選任された者がその職務に就くまでは、その職務を継続します。なお、取締役の解任は株主総会の決議によって行うことができ、法令上は解任に特別な理由や正当事由を要しません。株主総会で解任決議が可決された取締役はその職を失います。ただし、解任の理由が職務上の違法行為等である場合には、会社は株主総会の決議に基づいて、当該取締役に対して責任追及の訴えを提起することもあります。
(2) 取締役の交代に関する手続き
取締役の交代(退任・就任)が生じた際には、以下のような正式な手続きを経る必要があります。
(a) 株主総会での決議:取締役の選解任は株主総会の決議事項です。まず株主総会を招集し、当該取締役の解任承認および新任取締役の選任に関する決議を行います。株主総会は定款および会社法の定める方式(所定の通知期間や公告方法等)で開催され、議事録に決議内容を記載します。
(b) 議事録の認証・取締役変更の登記:株主総会議事録は公証人による認証(公正証書化)を行い、その決議内容にもとづく取締役変更の登記申請を速やかに行います。メキシコでは、議事録の認証を経て商業登記所で登記を完了させることで、取締役の変更が法的効力を持つこととなります。したがって、登記が完了するまでは、新たに選任された取締役の権限行使には制約が生じる可能性があります。






