「フィリピンにおける取締役の交代に関する法制度と手続の概要」

(1) 取締役の資格

フィリピンの会社法では、取締役に就任するための要件が定められています。主な要件は次のとおりです。

・成年であること

・当該会社の株式を保有していること

※ 国籍・居住に関する要件は原則として設けられていません。

(2) 取締役の交代手続

取締役が交代する場面は主に3つあります。

(a)任期満了による退任の場合

取締役の任期は1年です(会社法22条)。任期満了後は株主総会で新しい取締役が選任されます。

株主総会において取締役を選出するには、発行済株式の過半数以上を保有する株主が出席している必要があります(会社法23条)。この定足数を満たした上で、株主は累積投票の方法により取締役を選ぶことができます(会社法23条)。

※累積投票とは

累積投票とは、保有株式×選出される取締役人数分の票を自由に配分できる制度です。

【累積投票の例】

・選出される取締役の人数:3人

・株主Aが保有する株式数:80株

・累積投票によるAの議決権数:80株 × 3人 = 240票

この240票を、株主Aは1人の候補者に全て投じることもできますし、複数の候補者に分配して投票することも可能です。

(b)解任の場合

取締役の解任は、原則として、株主総会において発行済株式総数の3分の2以上の株主による承認によって行うことができます。また、解任によって欠員が生じた場合には、同じ株主総会の中で後任の取締役を選任する決議を行うことが可能です。

(c)辞任などの場合

・取締役会が定足数を満たしている場合

⇒取締役会が株主の中から後任を選任することができます。

・取締役会が定足数に達していない場合

⇒株主総会で後任を選任する必要があります。この場合、欠員が生じてから45日以内に株主総会を開催する必要があります。

(3) 新たに選任された取締役の登録

新たに選任された取締役は、選任から30日以内にGIS(General Information Sheet)を通じて登録する必要があります。