⑴ 不正発覚時の対応
従業員による不正行為が発覚した場合には、通常は懲戒処分の可否を検討します。懲戒処分の手続においては会社が不正行為の事実を調査し、処分対象となり得る従業員本人から弁明を受け付けるというステップを踏む必要があります。このような調査は法律上求められているのは勿論、会社が不正行為の実態を把握し、再発予防策を講じるためにも重要です。
⑵ 不正行為調査の際の注意点
裁判例によると、使用者が従業員に対して不正行為を追及する場合、労働者が追及されている不正行為の内容を認識し、防御できる程度にその不正行為が特定されている必要があり、具体的事実を特定せずに行った処分は無効となり得ます。使用者としては、少なくとも不正行為の内容、日時、場所等を可能な限り特定すべきであると考えます。
また、裁判例では、懲戒解雇に至るだけの重大な非違行為があったとしても、従業員に対して弁明の機会が形式的にしか行われていなかった、あるいは一切行われていなかったことを理由に、処分が無効とされるケースが多々あります。したがって、不正行為調査を行う際には、まずは客観的証拠等により事実を特定した後、処分対象とする従業員に反論の機会を与えなければならないことに注意が必要です。