「従業員が不正を行った場合の法的対応について(フィリピン)」

フィリピン労働法上、労働者の責めに帰す事由に基づく解雇については、以下の5つに分類されています。

  1. 重大な不正行為または意図的不服従
  2. 相当かつ常習的な職務怠慢
  3. 意図的な詐取、使用者からの信用を損なう行為
  4. 雇用主に対する犯罪行為
  5. 上記に関連するそれ以外のケース

従業員が何らかの不正を行ったと想定する場合、1を事由に解雇を進めていくことがほとんどですが、経理や秘書、マネージャーなどの不正行為は3を解雇事由にすることがあります。1を解雇事由にする場合、不正行為であるだけでは十分ではありません。労働法に記されている通り、重大(Serious)な不正行為でなくてはいけません。重大(Serious)と認められないと、解雇権の濫用と判断されます。解雇権の濫用と判断された場合、不当解雇の時点からの未払い賃金、損害賠償や各種付加金の支払命令がくだされることがあり、従業員に非があるにも関わらず、雇用主のほうが不利益を被ってしまうことが往々にしてあるのです。

不正行為を総合的に考慮して重大であると判断した場合、会社としては解雇プロセスに進むことになりますが、フィリピンはDue Processを非常に重んじるので、解雇や停職にあたっては、二段階通知(Twin Notice)が必須となります。

まずは書面により実際に行われた不正行為と解雇事由、処分の内容(例えば解雇)について記された書面を本人に交付します。この書面には、必ず本人に(5日以内に書面によって)反証の機会が与えられている旨を記載されていなければなりません。本人の反証をもとに、弁明の機会(Opportunity to be heard)を行います。この際、従業員は必要であれば代理人(弁護士や家族)等を同席させることが可能です。

最初の通知とそれに対する従業員の反論、そして弁明の機会でのプロセスを経て、依然として解雇相当であると決定した場合、最終通知をし、解雇をします。

フィリピンでは従業員に非がある場合でも、解雇プロセスが不十分な場合、むしろ従業員側の利益となることがあります(金銭支払い・復職等)。だからといってどれだけ不当なことをしても解雇しないという決断を取り続けると、雇用主の姿勢をみて従業員が不当な行為をし続けるといった場合もあり、労働環境を正当に保てなくなりますので、不正行為の従業員への対応については専門家のアドバイスを求めつつ、毅然とした対応をとることを強くおすすめします。