「従業員が不正を行った場合の法的対応について(アラブ首長国連邦(ドバイ))」

アラブ首長国連邦(UAE)では、私企業における労働関係に関する規則(2021年連邦令第33号。以下、「連邦労働法」といいます。)および連邦労働法の施行に関する内閣令(2022年内閣令第1号。以下「内閣令」と言います。)において、労働者の不正行為に対して雇用主が取りうる懲戒処分について規定されています。なお、連邦労働法は、Abu Dhabi Global MarketおよびDubai International Financial Centerを除くフリーゾーンを含む全域には適用されます。

労働者の不正行為が発覚し、懲戒処分を検討するにあたっては、まず、被疑不正行為に関する調査、当該労働者への書面による通知、弁明の機会の付与、弁明に対する調査、当該労働者への懲戒処分の内容および理由並びに再発時の処罰に関する書面の交付、という手続を踏む必要があります(内閣令第24条第3項)。また、不正発覚から30暦日以内でなければ当該不正に対する非難はできず、懲戒処分は調査終了から60暦日以内に行う必要があります(同4項)。調査実施に必要な場合には、30日を超えない期間、賃金の半額を支払って当該労働者を出勤停止にすることができますが、嫌疑なしまたは処分留保の判断をしたときには賃金全額を支払わなければなりません(連邦労働法第40条1項)。

懲戒処分には、書面通知、書面警告、減給(月5日以上)、無給・出勤停止(14日以内)、賞与剥奪(1年以内)、昇級禁止(2年以内)、解雇の種類があり(連邦法第39条1項)、会社は各懲戒処分の内容を予め定めておく必要があります(内閣令第24条2項)。懲戒処分は、守秘義務違反の程度、従業員の身体・安全への影響、会社に与える経済的影響、会社の信用・名誉棄損の程度、権限踰越の有無、再発性、刑罰的・道徳的性質の項目により判断される不正行為の重大性に鑑みて適切なものでなければなりません(同1項)。

これらの処分に先立つ手続に瑕疵があったときには、処分が無効とされるので、法令や内規に従って慎重に手続きを履行することが肝要です。