(1) 懲戒解雇
従業員による不正が発覚した場合、事前に十分な調査を行う必要があります。(労働法2003年第13号(以下「労働法」といいます)。そのうえで、a) 窃盗や横領、b) 会社に対する詐欺、脅迫、c) 秘密漏洩、d)会社の重大な資産の損壊、e) 就業中の飲酒や麻薬などの重大な過失(pelanggaran berat)があった場合には、解雇の過程で必要となる警告書を発行することなく即時解雇が可能と規定されています(労働法2003年第13号(以下「労働法」といいます)労働法第158条)。しかし、本規定は2004年に、最高裁判所により、「即時」に解雇することは違憲と判断されており、従業員に重大な過失があったとしても、労働裁判所の決定がなされた上でないと当該理由による解雇を行うことはできません(2004年10月28日付012/PUU-I/2003号)。また、労働裁判期間中は、従業員を解雇することはできず、休職扱い(skorsing)とすることは可能ですが、その場合にも6カ月間は給与を支払う必要があります(労働法第155条)。
(2) 合意退職
上記に記載の通り、不正行為があったとしても、労働裁判所での手続きを経る必要があり、時間とコストがかかること、労使紛争が解決するまでは従業員に給与を支払わなければならないことから、実務においては、会社と従業員間で、雇用関係の終了の合意とすることが多いです。合意を得られた場合には、当該合意を労働裁判所に登録することにより当該合意に基づき退職した従業員は雇用関係の終了について事後的に争うことが難しくなります。ただし、退職の際には、重大な過失として合意退職する場合にも、権利補償金と解雇金の支払いをする必要があると解されます(判例:9/Pdt.Sus-PHI/2023/PN.Palu)。
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