(1) 社会保障制度の概要
インドネシアでの社会保障制度は医療保険と労働者社会保障の2つに区分されており、それぞれBPJS KesehatanとBPJS Ketenagakerjaanという機関が運用しており、この運営機関の名称から2つの社会保障制度を総称して一般的にBPJS(Badan Penyelenggara Jaminan Sosial)と呼びます。
BPJS Kesehatanは医療保険制度であり、加入することで、BPJS Kesehatanと協定を提携している医療機関で診察、治療、医薬品の提供などのサービスを受けることができます(国民健康保障に関する大統領令2018年第82号第67、68条)。一方、BPJS Ketenagakerjaanは労働者社会保障制度であり、①労災補償(JKK:Jaminan Kecelakaan Kerja)、②死亡保障(JKM:Jaminan Kematian)、③老齢保障(JHT:Jaminan Hari Tua)、④年金保障(JP:Jaminan Pensiun)、⑤失業保障(JKP:Jaminan Kehilangan Pekerjaan)の5つで構成され(社会保障に関する法律2011年(以下、「社会保障法令」といいます)第5条)、就労中の事故による疾病や死亡、積み立てた年金、失業後の手当等を受けることができます。
(2) 外国人の加入義務
法令上において、6カ月以上、インドネシアで働く現地採用のスタッフや駐在員などの外国人はBPJSの分類のうち、BPJS KesehatanおよびBPJS Keteagakerjaanにおける①労災補償、②死亡保障、③老齢保障の対象となります(社会保障法令第5、14条)。一方、BPJS Ketenagakerjaanにおける④年金保障、⑤失業保障は外国人には登録資格がないため加入できません(失業保障の実施に関する政令2025年第37号第4条)。なお、より具体的な取り扱いについては、BPJSに問い合わせて確認する必要があります。
(3) 社会保障協定の有無
現時点で日本とインドネシアの間に社会保障協定は締結されていません。このため、日本人駐在員の場合、一定期間を超えてインドネシアで就労する際には日本の社会保険料も引き続き納めつつ、インドネシアのBPJSへの加入と納付義務も生じることになります。