「ベトナムにおける外国人に対する社会保障制度の概要」

(1) 制度の概要

ベトナムにおいては、労働者に対して二種類の年金制度が存在しており、i) 国家が提供する強制社会保険制度に基づく年金制度、及び ii) 国家の方針に基づき社会保険当局が実施する補足退職保険(市場原理に基づく任意加入の保険制度であり、その基金は国家予算とは独立した金融基金)に基づく年金制度から構成されています。

本ニュースレターの範囲においては、国家が提供する強制社会保険制度に基づく年金制度に関する規定に限定して取り上げます。

(2) 外国人労働者の加入要件

① ベトナムの強制社会保険制度への加入が義務付けられる外国人労働者

ベトナムにおいて就労する外国人労働者(以下「外国人労働者」といいます。)は、以下の要件を満たす場合、ベトナムの強制社会保険制度に加入しなければなりません(社会保険法〔Law No. 41/2024/QH14〕第2条第2項及び政令〔Decree 158/2025/ND-CP〕第3条第1項)。

契約期間が12か月以上の労働契約に基づいて就労していること、及び
以下の免除事由に該当しないこと
規定された企業内人事異動プログラムに基づく場合
労働契約締結時に既に定年に達している場合
ベトナムが締結国となっている国際条約または二国間協定に基づく場合
上記要件を満たす者を、以下「外国人加入者」といいます。

なお、外国人労働者が、国内外を問わず勉学、研修または就労のために派遣され、その間ベトナムにおいて給与の支払いを受けている場合も、外国人加入者として扱われます。

② 毎月の強制社会保険料の拠出

現行の規定に基づき、外国人加入者に係る退職及び遺族基金の拠出率はベトナム人労働者に適用されるものと同一であり、労働者と使用者との間で以下のとおり分担されます。

外国人加入者による毎月の拠出率: 強制社会保険料算定基礎となる給与の8%(社会保険法〔Law No. 41/2024/QH14〕第33条第1項)
使用者による外国人加入者に対する毎月の拠出率: 強制社会保険料算定基礎となる給与の14%
(3) 日本との二国間社会保障協定の有無

ベトナムと日本は、2018年以来5回にわたり情報交換及び社会保障協定の内容準備を行ってきました。具体的には、2024年8月に開催された日越協力委員会の会合において、両国は二国間社会保障協定の交渉を開始することを決定しました。本ニュースレターの発行日時点においては、当該二国間社会保障協定に関する最新の進展は公表されておりません。しかし、近い将来、ベトナムと日本との間で社会保障協定が締結されるのではないかと思われます。