「タイにおける製造物責任に関する法制度の概要について」

タイでは、製造物責任に関し、Liability for Damages Arising from Unsafe Products Act B.E. 2551が制定されています。

(1) 対象物

「製造物」とは、販売のために製造または輸入されたあらゆる種類の動産をいい、農作物を含みます。「製造」には、製作、混合、調理、装飾、組立、発明、変形、改造、選別、再包装、冷凍、放射線照射その他これに類する行為が含まれます。また、「農作物」とは、農業(耕作、園芸、畜産、水産、養蚕、きのこの栽培など)によって生産された製品(ただし、天然作物は除く)をいうとされています(同法第4条)。

(2) 責任主体

全ての事業者は、消費者に販売された危険な製造物によって損害が生じた場合、故意または過失の有無を問わず、連帯してその損害を賠償する責任を負うとされています(同法第5条)。「事業者」とは、次のいずれかに該当する者をいうとされています(同法第4条)。

  • 製造者または製造を請け負った者
  • 輸入者
  • 製造者、請負者または輸入者が特定できない製品の販売者
  • 自らの名称、商号、商標、表示、またはその他の方法により、製造者、請負者または輸入者であると示している者

このように、単なる販売者であっても、製造者を特定できない場合や、自らを製造者と見せかけるような表示を行っている場合には、責任を問われる可能性があります。

(3) 消費者の立証責任

事業者に対して責任を問うためには、被害を受けた消費者または第10条に定める代理人は、当該製造物を通常の方法で使用・保存していたにもかかわらず損害が生じたことを証明すれば足り、どの事業者によって損害が生じたかを証明する必要はないとされており(同法第6条)、消費者の立証責任が比較的軽減されています。

(4) 免責規定

 事業者は、次のいずれかを証明した場合には、責任を免れることができるとされています(同法第7条)。

  • 当該製造物が危険な製造物ではないこと
  • 被害を受けた消費者が製造物の危険性を認識していたこと
  • 製造物に正確かつ明確な使用方法、保存方法、警告または関連情報が表示されているにもかかわらず、不適切な使用または保存によって損害が生じたこと

(5) 懲罰的損害賠償

 事業者が製造物の危険性を認識しながら製造・輸入・販売した場合、または重大な過失により認識しなかった場合、または危険性を認識した後に適切な措置を講じなかった場合には、裁判所は懲罰的損害賠償を命ずることができるとされており、注意が必要です。この懲罰的損害賠償は、実際の損害額の2倍を超えないものとされています(同法第11条2項)。