フィリピンでは、消費者法(The Consumer Act of the Philippines)によって、製品の欠陥により消費者(商品を購入する個人等)が損害を受けた場合の製造者等の責任(製造物責任)が定められています。
(1) 責任の主体(消費者法97条)
消費者法により、製造者(manufacturer)や輸入者(importer)等は、製品の欠陥によって消費者に生じた損害について責任を負います。また、製造者や輸入者を特定できない等の場合には、販売者(tradesman or seller)も同様の責任を負います(以下、「製造者等」といいます)。
(2) 過失の必要性(消費者法97条)
この責任は過失の有無に関係なく発生する無過失責任であり、消費者は製造者等の過失を立証する必要がありません。
(3) 欠陥の判断基準(消費者法97条)
製品が「正当に期待される安全性を備えていない」(the safety rightfully expected of it)とき、その製品は欠陥があると判断されます。判断にあたっては、通常想定される使用方法および危険性などが考慮されます。
(4) 免責事由(消費者法97条)
製造者・輸入者等は、「消費者または第三者のみに過失があること」等を証明した場合には、製造物責任を免れることができます。
(5) 消費者が選択できる救済手段(消費者法100条)
製品の品質に欠陥がある場合、製造者等は消費者の請求を受けてから原則として30日以内に欠陥を修理する必要があります。この期間内に修理が行われないときは、消費者は製品の交換や代金返還等を請求することができます。
(6) 免責の禁止(消費者法104条、106条)
消費者法は、製造者等が欠陥を知らなかったことを理由に責任を免れることを認めていません。また、契約書において製造者等の責任を免除・軽減する条項を定めても無効とされます。
(7) 時効(消費者法169条)
製造物責任に関する請求は、取引が完結した日から2年以内に行う必要があります。ただし、隠れた欠陥(hidden defects)がある場合は、欠陥を発見した時点から2年以内に請求することができます。
また、時効の起算点について例外を認めた判例があります(MAZDA Quezon Avenue v. Alexander Caruncho)。この判例では、契約に3年間の保証期間が設けられていたことなどを考慮し、時効の起算点を取引完了時ではなく、保証期間の満了時とする判断が示されました。






