「インドネシアにおける労働者派遣制度の概要について」

(1) 概要

 インドネシアにおける、派遣労働(alih daya)は、オムニバス法2020年第11号(以下、「オムニバス法」といいます)、およびその実施規則である政令2021年第35号(以下、「オムニバス政令」といいます)において規定されています。

オムニバス法の制定以前は労働法2003第13号(以下、「労働法」といいます)において規定され、派遣労働が許される業務が派遣先の会社の主要業務(kegiatan utama)とは分離されている必要があり、清掃や警備、運転手など、補助業務(penunjang)とされるものに限定されていました(労働法第65号)。オムニバス法においては、補助業務に限定されるという条項が削除され、業務内容にかかわらず原則として全業務で派遣労働が可能となり、幅広い領域で派遣労働が活用されています。

(2) 要件と義務

派遣元の会社は、派遣会社と労働者間では雇用契約書の締結が必須です。契約は、有期雇用契約(PKWT)もしくは、無期雇用契約(PKWTT)に基づきます。労働条件等、契約内容に関する紛争の取り扱いは、雇用契約書、就業規則または労働協約に規定されなければならず、その責任は派遣先の会社ではなく、派遣元の会社が負うこととされています(オムニバス政令第18条)。

有期雇用契約(PKWT)に基づいて雇用されている派遣労働者については、派遣元の会社は、派遣先での業務が存続する限り、その雇用を継続させる義務を負います。そのため、派遣元会社の買収や派遣先企業の都合等によって、別の派遣元会社に切り替わる場合には、労働者の雇用は、新たに派遣先と契約した派遣元会社において継続されなければなりません。もし雇用の継続が保証されない場合には、当初の派遣元会社が、労働者に対して未払い給与の支払いなど、権利補償を行う義務を負います(オムニバス政令第19条)。