「タイにおける労働者派遣制度の概要について」

(1) 労働者保護法

タイでは、日本の労働者派遣法のような派遣労働を規律する法令は存在していませんが、労働者保護法(the Labor Protection Act)第11/1条が派遣労働に関して規定しています。

まず、同条1項によると、「事業者が労働者の就職あっせんを業とする者でない者に労働者を派遣させ、その労働が、事業者が責任を有する生産工程または事業の一部であり、その者が労働を管理監督、または派遣された労働者の賃金の支払いについて責任を負うか否かにかかわらず、事業者は、当該派遣された者の使用者とみなす」とされています。つまり、派遣労働者を受け入れた会社は、派遣労働者の労働の管理監督や賃金の支払いの有無に関わらず、当該派遣労働者の使用者として扱われることになり、労働者保護法上の使用者としての責任を負うこととなります。

つぎに、同条2項によると、「事業者は、直接雇用契約に基づく労働者と同様の労働を提供する派遣労働者に対し、差別なく公平な権利利益および福利厚生を与えなければならない」とされています。派遣労働者に他の労働者と同様の福利厚生等が与えられない場合には、労働者保護法違反となるため、注意が必要です。

(2) 人材派遣業ライセンス

タイには、人材紹介、人材斡旋に関するライセンスは存在していますが、人材派遣業に関するライセンスは存在していません。