(1) 定義
ベトナム労働法によれば、労働者派遣とは「労働者が派遣企業と雇用契約を締結し、雇用契約を締結した派遣企業との間の労働関係を維持しながら、その後、派遣企業がその労働者を他の使用者(クライアント企業)に派遣して就労させる仕組み」と定義されています。
なお、労働者派遣は外国人労働者受入サービスとは異なる概念であり、後者については外国投資家に対し市場参入が制限されています。
(2) 労働者派遣事業を行う際の原則
適法に労働者派遣取引を行うためには、関係当事者は以下の原則を考慮する必要があります。
- 労働者派遣サービス提供者(派遣企業)は、労働者派遣ライセンスを保有している場合にのみ、当該サービスを提供することができます。
- 労働者派遣サービス利用者(クライアント企業)は、ライセンスを有しない派遣企業から派遣労働者を受け入れること、また派遣労働者を別のクライアント企業へ派遣し直すことが禁止されています。
- クライアント企業は、以下の場合に派遣労働者を使用することができます。
- 一定期間、労働需要が急増して雇用が必要な場合
- 産前産後休業を取得している従業員、労働災害または職業病を負った従業員、または公民としての義務履行する必要がある従業員の代替として派遣労働者が配置される場合
- 業務が高度な技能を要する場合
ただし、クライアント企業は以下の場合に派遣労働者を使用することはできません。
- ストライキ中または労働争議解決中の従業員の代替として派遣労働者が配置される場合
- 派遣企業との間で、派遣労働者の労働災害および職業病に関する補償責任について合意がない場合
- 組織構造の変更、技術的変更、経済的理由、会社の全部または一部の分割、統合または合併により解雇された従業員の代替として派遣労働者が配置される場合
- 労働者派遣の最長期間は12か月です。
- 労働者派遣の対象となる業務範囲は、政令145/2020/ND-CP付属書II(リスト)に規定される20職種に限定されます。これらには、通訳/翻訳/速記、秘書/アシスタント、受付、ツアーガイド、販売支援、プロジェクトアシスタント、生産機械システムのプログラミング、テレビ・通信の製造および設置、建設機械および産業用電気システムの運転/点検/修理、建物・工場の清掃、文書編集、ボディーガード/警備、電話によるマーケティング/顧客サポート、財務・税務処理、自動車修理/運転検査、工業図面の作成およびスキャン/インテリアデザイン、運転手、船舶の管理・運転・保守・サービス、油田施設の管理・監督・運転・修理・保守・サービス、パイロット、客室乗務員/航空機および機器の整備・修理/運航管理・運航監督などが含まれます。
リストが市場需要を満たしていない可能性があり、立法者は労働派遣の認可職種の拡大に非常に慎重であり続けているものの、派遣企業がリストに記載されていない業務に労働者を従事させた場合、違反となり、ライセンス取消しにつながる可能性があります。
- クライアント企業と派遣企業の間の契約(労働者派遣契約)は書面で作成し、少なくとも2部を作成して各当事者が原本1部を保有する必要があります。労働者派遣契約の内容は労働法第55条2項で定められた事項を含まなければならず、派遣労働者と派遣企業間の労働契約に規定されるものより不利な労働者の権利および福利厚生に関する合意を排除しなければならない。
- 派遣労働者は、同等の資格を持ち同一または同等の職務に従事する直接雇用の従業員より低い賃金とされてはならず、また労働条件において異なる取り扱いを受けてはなりません。






