(1) 概要
メキシコでは単なる労働者供給を目的とする派遣は禁止され、労働者派遣は「専門的なサービス・業務」の提供に限定されています。このような専門的サービスを行う事業者は、労働社会保障省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)への登録が義務付けられており、登録制度は「REPSE(Registro de Prestadoras de Servicios Especializados u Obras Especializadas)」として運用されています。登録は専用ウェブサイトを通じて行われ、有効な電子署名、法人情報、IMSS(社会保険機構)登録番号、従業員数、主要事業活動などの情報の提出が求められます。この登録は3年間有効であり、違反行為があった場合は取り消される可能性があります。
また、連邦労働監督局(Dirección General de Inspección Federal del Trabajo)は、REPSE登録事業者およびそのサービス利用者に対し、労働法の遵守状況を監視する権限を有します。監督官は、登録情報と実態の一致、専門業務の範囲、契約書面の有無、社会保険加入および賃金支払いの適正性などを確認します。違反が発見された場合、登録の取消しが行われることがあります。
(2) 要件と義務
労働者派遣を利用するためには、①派遣元企業がREPSEに登録されていること、②派遣先の主要な経済活動または事業目的に該当しない範囲の専門業務であること、の2点が要件となります。専門的サービスとは、特定の技術・設備・認証・経験等により特徴づけられる付加価値の高い業務を指し、登録事業者の専門性を基礎として判断されます。労働社会保障省は、業種ごとに派遣が認められない主要業務を定めています。たとえば、観光・宿泊産業においては、客室清掃、顧客登録、料理・接客・リネン業務などはホテル業の主要な経済活動とされ、派遣は原則として認められません。
また、派遣を利用する際には、契約書の締結が必須です。契約書には、提供されるサービス内容、派遣人員数、REPSE登録番号、経済活動識別番号などを記載しなければなりません。また、派遣労働者は識別可能なIDコードやバッジ等を携帯し、派遣先従業員と区別できるようにする必要があります。
(3) 実務上の注意点
労働者派遣を利用する事業者は、当該派遣される労働者に対し、雇用主である専門サービス・業務提供事業者と連帯して責任を負います。したがって、労働者派遣を利用する場合は、派遣元企業が法令を遵守する事業者であるかどうかといった事前の確認が重要となります。






