(1) 機関の種類及び役割
ベトナム企業法では、有限責任会社及び株式会社に共通して、社長又は総社長が会社の業務執行を担う経営責任者として設置されます。一方、取締役は株式会社にのみ設置される機関であり、株式会社の経営及び監督に関与する立場にあります。
(2) 責任内容
ベトナム企業法は、社長・総社長及び取締役(以下「社長ら」といいます。)に対し、主として以下の責任を課しています。
① 法令及び内部規定の遵守義務
社長らは、法令、会社の定款及び株主総会又は会社所有者の決定を遵守し、付与された権限を適切に行使し、義務を履行する責任を負います。
②忠実義務及び善管注意義務
社長らは、会社の利益を保護するため、誠実かつ慎重に職務を遂行する義務を負います。自己又は第三者の利益のために、その地位や権限を濫用し、会社の情報、秘密、事業機会又は資産を利用することは禁止されています。
③利益相反に関する通知義務
社長らは、自己が所有し、若しくは株式/持分を保有する会社、又は自己の関連者が所有し、共同所有し、若しくは個別に支配的持分/株式を有する会社について、会社(一人有限責任会社の場合には会社所有者)に対し、速やかかつ完全に通知する義務を負います。
これらの義務に違反した場合、社長らは、会社に生じた損害について、個人的又は共同して責任を負い、不当に取得した利益を返還するとともに、会社及び第三者に対し損害賠償責任を負います。
なお、複数社員有限責任会社では、会社が弁済期にある債務を支払うことができない場合には、社長又は総社長は、昇給又は賞与を受けることができないとされています。
(3) 法定代表者としての責任
また、社長らが会社の法定代表者を兼ねる場合、当該社長らは、自己の違反行為に起因して会社に生じた損害につき、法令に基づき個人的に責任を負います。
(4) 社長らに対する責任追及の手続
① 有限責任会社の場合
有限責任会社においては、会社とその管理者との間の紛争として、民事訴訟法第30条4項に基づく訴訟手続が認められています。
複数社員有限責任会社では、社員が、単独又は会社を代表して、権限及び義務に違反した社長又は総社長に対し、損害賠償等を求める訴訟を提起することができます。
② 株式会社の場合
株式会社においては、普通株式総数の少なくとも1%を保有する株主又は株主グループが、自己の名義又は会社の名義で、社長らに対し、会社又は第三者のために損害賠償等を請求する訴えを提起することが認められています。
(5) 紛争解決機関及び訴訟費用
社長らに対する責任追及に関する紛争は、原則として会社の本店所在地を管轄する人民裁判所において解決されますが、当事者の合意がある場合には、商事仲裁センターによる解決も可能です。
訴訟費用は原則として会社が負担しますが、複数社員有限会社及び株式会社では、訴えが却下された場合には、会社の費用として取り扱われず、各自の負担となります。






