「メキシコにおける取締役の責任追及に関する法制度度の概要について」

(1) 取締役の責任

会社法(Ley General de Sociedades Mercantiles)の規定によると、取締役はその職務に固有の責任を負うほか、法令及び定款に課せられた義務から生じる責任を負います。また、証券市場法(Ley del Mercado de Valores)では、取締役は、この法律および定款が当該法人に与える権能を誠実に行使するにあたり、会社およびその支配する法人のために最善の利益を確保するよう誠意をもって行動しなければならないとされており、公開株式会社の取締役は、会社に対する忠実義務を負っていると解されています。

(2) 取締役の責任追及

① 株主総会による責任追及

取締役の責任は、株主総会の決議により追及することが可能であり、株主総会は訴訟を提起する者を指定します。また、責任を果たしていないとして解任された取締役は、当該訴訟において請求に理由がないと判断された場合に限り、再任が可能とされています。なお、株主総会において責任追及の決議がなされた場合、当該取締役は直ちに職務の執行を停止しなければなりません。 

② 民事訴訟による責任追及 

資本金の少なくとも25%を保有する株主は、以下の要件を満たす場合、取締役に対して直接民事責任訴訟を提起することができます。

  1. 請求内容が原告の個人的利益にとどまらず、会社の利益となるものである場合
  2. 原告が、株主総会における「訴訟を提起しない」とする決議に賛成していない場合

なお、訴訟の結果得られた利益は原告ではなく会社が受領します。

(3) 取締役の損害賠償責任

商事破産法(Ley de Concursos Mercantiles)は、会社が同法の適用を受ける状況下の取締役の責任について特別の規定を設けています。取締役が以下のいずれかの行為を行った場合は、これらの規定に基づき損害賠償責任を負うとされています。

  1. 利益相反のある取締役会において議決権を行使し、または会社資産に関する決定を行った場合
  2. 他の株主の不利益となることを認識しつつ、特定の株主または株主グループに有利となる行為を故意に行った場合
  3. 正当な理由なく、雇用・地位・報酬を理由として自己のために経済的利益を得、または特定の株主・株主グループその他第三者の利益のためにそれを求めた場合
  4. 虚偽であることを認識しながら情報を生成・流布・公表・提供・要求した場合
  5. 財務諸表に影響を与える会社業務の記録を省略し、またはその本質を隠す目的で記録を変更、または変更を命じた場合
  6. 会社の会計に虚偽のデータを記録することを命じ、またはこれに同意した場合
  7. 法定保存期間前に、証拠隠滅を目的として会社の会計システムや記録等を破損・変更した場合
  8. 勘定科目や契約条件を不当に変更・命令し、実在しない取引・経費を記録するなど、違法行為または禁止行為を故意に行った場合
  9. 詐欺的行為、悪意ある行為、その他法令に基づく違法行為を行った場合 

ただし、いわゆる経営判断原則に相当する考え方として、以下のいずれかに該当する場合には免責が認められます。

  1. 取締役会の権限内の事項を承認するにあたり、関係法令または定款の要件を遵守した場合
  2. 合理的な疑義が生じない能力・信頼性を有する従業員、外部監査法人、独立専門家から提供された情報に基づいて意思決定・投票を行った場合
  3. 判断時に入手可能な情報に基づき最も適切な選択肢を選んだ場合、または会社の財産的損害の可能性を予見できなかった場合
  4. 法令に違反しない範囲で株主総会の決議に従った場合