「日本における取締役の責任追及に関する法制度度の概要について」

(1) 取締役の責任

取締役と会社の関係は委任関係であり(会社法330条)、委任を受けた者(受任者)は委任者に対し、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負います(民放660条)。

また、取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない義務を負っています(忠実義務)(会社法355条)。

善管注意義務と忠実義務の関係性は、学説上は様々な見解が見られますが、最高裁は、忠実義務とは善管注意義務を一層明確にしたにとどまり、善管注意義務とは別個の高度な義務ではないとしています。

そのため、善管注意義務と忠実義務は同質のものであると一般には理解されています。

(2) 取締役の任務懈怠責任

取締役が、その任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(任務懈怠責任)(会社法423条)。

取締役の任務懈怠には、法令・定款違反や善管注意義務・忠実義務違反が含まれます。

また、取締役が、会社の利益を犠牲にして、自己または第三者の利益を図る、いわゆる利益相反取引において、当該利益相反取引によって会社に損害が生じた場合には、任務懈怠責任が推定されます。

なお、経営判断の失敗が善管注意義務違反として、任務懈怠責任を構成するかについてですが、これが常に善管注意義務違反になり得るとすると、取締役の経営判断が委縮することとなりかねません。

 この点、判例では、判断の過程や内容に著しく不合理な点がないかぎり、取締役としての善管注意義務に違反するものではないといった考え方が示されています。

(3) 取締役の任務懈怠責任の追及方法

 取締役が会社に損害を与えた場合、会社は当該取締役に対し、損害賠償請求をすることができます。

 提訴権者については、以下のとおりです。

 ・監査役会設置会社:監査役が会社を代表して提訴(会社法386条1項1号)

 ・監査役設置会社以外の会社:代表取締役が会社を代表して提訴(会社法349条4項)。会社が取締役に訴えを提起する場合には、株主総会又は取締役会は、当該訴えについて株式会社を代表する者を定めることもできます(会社法353条、364条)。

 なお、取締役と会社が馴れ合い、会社が取締役の責任を追及しない場合も考えられます。

 そこで、株主(公開会社の場合、6か月前から引き続き株式を有する者に限る。)は、会社に対し提訴請求を

行い、提訴請求の日から60日以内に提訴がないときには、当該株主が、当該取締役を被告として、会社に対

する賠償を求める訴訟を提起できる株主代表訴訟と呼ばれる制度が設けられています(会社法847条)。

(3) 取締役の責任の免除

 取締役の任務懈怠責任は、総株主の同意がなければ免除できません(会社法424条)。