「インドネシアのトピック、最新の法令等の紹介について」

(1) 宗教手当(THR)の概要

インドネシアでは、年に1回宗教手当(THR:Tunjagangan)と呼ばれる賞与を付与することが規定されています(従業員のための宗教手当に関する労働大臣令2016年第6号(以下、「THRに関する規則」といいます)。付与する時期は宗教休暇の最低7日前までに支給する必要があると規定されており(THRに関する規則第9条)、従業員が信仰する宗教に応じて、宗教休暇は異なります。法令上においては、ムスリムはイドゥル・フィトリ(レバラン)、カトリック・プロテスタントにはクリスマス、ヒンドゥー教徒にはニュピ、仏教徒にはワイサック(ウェーサーカ)、儒教を信仰する従業員には、旧正月がそれぞれの宗教休暇に当たります(THRに関する規則第2条)。ただし、人口の80%以上がイスラム教徒であるインドネシアでは宗教に関係なくTHRをイドルフィトリ(レバラン)を基準に支給するのが慣行です。今年は、イドゥル・フィトリが2026年3月20日頃と予測されており、法令に基づき、遅くともその7日前までにTHRを支給する必要があります。もっとも、正式なイドリフィトリの日にちは、インドネシア政府により、直前に決定されるため、期限が変動する可能性があり、余裕をもった支給計画を策定することが重要です。

(2) THRの受給

THRの受給資格を持つのは、最低1ヶ月以上連続して勤務しているa) 正社員(Perjanjian Kerja Waktu Tidak Tertentu – PKWTT)及び、b) 有期雇用契約社員(Perjanjian Kerja Waktu Tertetu-PKWT)が該当します(THRに関する規則第2条)。また、宗教休暇前の30日以内に退職した従業員に対しても、支給義務があります(THRに関する規則第7条)。THRの金額は1年以上連続して勤務している従業員には、1ヶ月の固定給分を支給する必要があり、1カ月以上連続して勤務していない従業員には支払いの義務はありません。しかし、1年未満の勤務の場合、勤務月数に応じて、月割計算を行う必要があります。具体的な計算方式としては法令上、下記が規定されています(THRに関する規則第3、5条)。

 ”THR”=”勤続月数/12 “×”月の固定給”

また、勤続期間は1ヶ月単位とし、1ヶ月に満たない期間は法令上において規定はありませんが、切り捨てて計算するのが慣行です。例えば、2ヵ月10日勤務した従業員の場合は、10日分は切り捨てられ、2ヵ月分の給料に対する割合でTHRが支給されます。

(3) 罰則 使用者が従業員へのTHRの支払いを怠った場合、支払い期限日、つまり宗教休暇の7日前から換算して支払い額の5%の支払い義務が課されます(THRに関する規則第10条)。さらに、THRを支払わなかった場合には、a) 書面による警告、b) 事業活動の制裁、c) 生産設備の一部または全部の一時的な停止、d) 事業活動の停止(営業許可の凍結)のような行政制裁が下される可能性があります(賃金に関する規則2015年第78号)。