アラブ首長国連邦(ドバイ)のトピック、最新の法令等の紹介

(1) 地域情勢
2026年2月28日に勃発したアメリカ合衆国とイスラエルによるイラン・イスラム共和国に対する軍事攻撃は、(本稿執筆時点で)当事国間での早期の交渉妥結が期待される一方で、ペルシャ湾とインド洋を結ぶホルムズ海峡が事実上封鎖される状況が継続した状況が継続しています。

(2) 不可抗力
地域情勢によって生じるビジネス上の損害については、契約上の不可抗力条項でそのリスクを最小限に抑える対応が取られることが重要です。仮に、不記載等を理由として不可抗力条項で対応できない場合で、準拠法が現地法とされているときには、アラブ首長国連邦(UAE)の民法上の解釈によることとなります。
UAEでは、2026年6月1日から改正民法(2025年連邦令第25号)が施行されることとなっていますが、地域情勢の不安定化への対応に関して大きな改善が図られているとは言えません。
不可抗力について、現行民法(1985年連邦法第5号)では、両当事者を拘束する契約において義務の履行が不可能となった場合、対応する義務は消滅して、契約は自動的に解除され(第273条1項)、部分的な履行不能の場合には、その限りにおいて義務が消滅し、契約継続が一時的に不能となった部分についても同様とされ、債権者は債務者が認識しているときには契約を解除することができる(同第2項)と定められていました。これに対し、改正民法では、現行民法の規定内容に加えて、部分的な履行不能時または一時的な契約継続困難時には、裁判所に契約全体の解除を求めることができ(第236条第2項、3項)、一時的な契約継続困難時には、契約の変更も可能とされています(同3項)。このように、民法により契約当事者が享受できる救済は、当事者間での契約の変更および裁判所への契約解除の申立に拡張されていますが、契約上の義務の履行不能が条件とされているため、履行が困難であることや履行の遅滞といった事態には対応できません。
因みに、予見不可能な例外的事態に関して、現行民法第249条と同様に改正民法第224条は、義務履行が不可能ではないとしても、債務者に過大かつ重大な損害をもたらすときには、裁判所が各当事者の利益を比較考慮して、合理的なレベルにその義務を軽減することができるとし、これを強行規定としています。この規定は、契約時に予見不能であった例外的事態が前提となっているため、対イラン攻撃開始前の契約に対して適用可能とは考えられるものの、債務者への過大かつ重大な損害の発生の証明が必要となり、救済の範囲は当事者間の均衡を図る限度に留まることに注意しなければなりません。一方、2026年3月以降に締結される新たな契約に関しては、本条の適用による救済は難しいと考えられ、本条に反しない形でUAEへの軍事攻撃の可能性を念頭に不可抗力条項を作成することが肝要となります。