インドのトピック、最新の法令等の紹介

(1) インドの外国直接投資規制の再調整

インドへの外国直接投資(FDI: Foreign Direct Investment)は、外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)及び同法に基づくForeign Exchange Management (Non-Debt Instruments) Rules, 2019(NDI規則)等の施行規則によって規律されています。

インドの外国直接投資規制については、自動承認ルートと政府承認ルートの2種類があります。

政府承認ルートとは、一定の制限を付した事業分野について投資をする際には、管轄する管轄官庁から事前の承認を得ることが必要となるルートをいいます。

他方、このような事前の承認を不要とするルートが、自動承認ルートです。

この点、インド政府は2020年にプレスノート3号を公表し、インドと陸上の国境を接する国(中国、バングラデシュ、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマー、アフガニスタン)の企業等、または当該国の企業等が「実質的所有者」(Beneficial Owner)となっている企業等からインドへ外国直接投資については、インド政府による事前承認を得る必要があるとしていました。

日本は、インドと陸上の国境を接する国ではありませんが、日本企業の株主に、例えば中国の企業や投資家が含まれている場合、当該中国の企業や投資家が「実質的所有者」となっている企業からインドへの外国直接投資として、政府承認ルートでの審査が求められる可能性があります。

 他方で、「実質的所有者」の定義が従来不明確であったため、政府承認ルートの対象なのか、承認が得られるのか等の点に不透明性があり、また、審査に時間を要し、投資の実行が遅れるといった不便が生じ得ました。

この点、インド政府は、2026年3月に、プレスノート3号の規制を見直すプレスノート2号を新たに公表しました。

プレスノート2号では、「実質的所有者」の定義が明確化されており、マネーロンダリング禁止規則(Prevention of Money Laundering Rules, 2005)の定義に準拠するものとされています。

 具体的には、当該企業に対して「支配権」(Control)を有しておらず、実質的な持ち分が10%以下である場合には「実質的所有者」に該当しません。なお、支配権には、株主間契約等に基づく取締役の過半数を任命する権利、または経営もしくは方針決定を支配する権利等が含まれます。

 従来は、「実質的所有者」の定義が不明確で、中国資本等がわずかに含まれている場合にも、事前承認を申請しなければなりませんでしたが、今般、「実質的所有者」の定義が明確化されたため、株主の中に中国の企業や投資家が含まれていても「実質的所有者」には該当しない場合、自動承認ルートで外国直接投資を行うことができ、規制が実質的に緩和されたことになります。