ミャンマーのトピック、最新の法令等の紹介

倒産法(Insolvency Law)に基づくミャンマー法人の清算手続き

近年のミャンマーにおけるビジネス環境の変化に伴い、現地事業の縮小や撤退、法人清算を検討する日系企業が増加しています。ミャンマーにおける法人の清算・解散手続きは、従来は2017年ミャンマー会社法に基づいて実施されていましたが、2020年倒産法(Insolvency Law)および同規則(Insolvency Rules 2020)に基づく手続きへと完全に移行しています。それに伴い、会社法時代は、清算人の資格要件に厳格な法定基準がありませんでしたが、倒産法下では、ミャンマー倒産管財人規制評議会から正式に倒産管財人登録証(Insolvency Practitioner Registration Certificateを取得した専門家を清算人に選任しなければなりません。

本稿では、企業が清算を計画する上で不可欠となる倒産法に基づく清算手続きの重要ポイントと具体的なプロセスを、実務的な観点から解説します。

(1) 株主による自主的清算の流れ

日系企業が現地法人を閉鎖する際、最も一般的である株主による自主的清算の基本的な流れは以下の通りです。

①取締役会による資産負債状態の宣言(Statutory Declaration)

取締役会を開催し、会社の資産・負債を精査します。取締役の過半数が「会社は1年以内に債務を完済できる」旨の法定宣言書および資産負債計算書を承認します。

②株主総会における特別決議と清算人の選任

株主総会(臨時株主総会)を開催し、会社の清算に関する特別決議を可決します。同時に、倒産管財人を清算人に選任します。

③DICAへの登記および公告

清算人は、選任から2日以内にDICAに対して選任通知を登記します。また、選任から5営業日以内に、現地の日刊新聞紙上にて清算開始の一般公告を行います。

④債権回収・資産処分および税務クリアランス

取締役の権限は清算人に移譲されます。清算人は会社の残余資産を売却・処分し、債権者への弁済を行います。並行して、税務監査(Tax Clearance)を完了させます。

⑤最終株主総会の開催と解散登記

清算手続きが完了後、清算人は計算報告書を作成し、最終株主総会を招集します。総会後1週間以内にDICAに最終報告書を提出し、受理から3ヶ月が経過することで、法人資格が正式に「消滅(Dissolved)」します。

(2) 日系企業が留意すべき実務上の注意点

①税務クリアランス(Tax Clearance)の長期化

法律上の手続きは1年以内の完了を目指すよう規定されています(1年を超える場合は年次報告が必要)。しかし、ミャンマーの税務当局による過去の未払税金の精査や税務クリアランスの取得には、現在も膨大な時間を要するケースが大半です。実務上は、清算開始の数ヶ月前から事前準備(バックタックスの整理等)を行うことが推奨されます。

② 従業員への解雇補償金 清算に伴い現地従業員を解雇する場合、ミャンマーの労働法に基づく勤続年数に応じた解雇補償金の支払いに加え、事前の通知義務を遵守する必要があります。