⑴ 2026年改正倒産・破産法典の概要
2026年4月6日、2026年改正倒産・破産法典(Insolvency and Bankruptcy Code(Amendment)Act, 2026( (以下、「本改正法」といいます)が公布されました。現時点では一部の規定のみが施行されており、段階的な施行が予定されています。
本改正は、2016年に制定された倒産・破産法(以下、「IBC」といいます)の大規模な改正であり、取引先企業の倒産リスク管理、債権回収実務、および保証債務の履行の観点から重要なものとなっています。IBC自体は廃止されず、引き続き効力を有します。
⑵ 定義規定の整備
会社法上の評価人と同義である「登録評価人」の概念、および倒産専門家、倒産専門家機関、情報機関、登録評価人等を包含する「サービス提供者」の概念が新たに導入され、規制上の監督が一本化されました(本改正法2条(IBC3条(27A)、(31A)[新設]))。
また、「担保権」には、当事者間の合意や取り決めなしに単に法律の作用によって生じる担保権は含まれない旨が明確化されました(本改正法2条(IBC3条(31)Explanation[新設]))。
さらに、「否認対象取引」が新たに定義されました。優先取引(IBC43条)、過小評価取引(IBC45条)、債権者詐害取引(IBC49条)および高利与信取引(IBC50条)に規定される取引を併せて否認対象取引として構成するとしています(本改正法3条(IBC5条(2A)[新設]))。
⑶ 企業倒産処理手続(CIRP)の迅速化
審判機関は企業倒産処理手続(CIRP)申立受理から14日以内に許可・却下を決定する義務を負い、決定できない場合は理由を書面で記録しなければなりません(本改正法4条(ICB7条(5)[新設])。却下は7日間の補正機会付与後にのみ可能で、情報照会機関の債務不履行記録があれば原則それのみで不履行が認定されます(本改正法4条(IBC7条(5)Explanation II[新設])。同様の期限・記録義務は運営債権者申立て・債務者自身の申立てにも拡張されました (本改正法5条(IBC9条(5)ただし書[新設])、本改正法6条(IBC10条(4)但ただし書[新設]))。
⑷ 申立ての取下げ
債権者委員会(Committee of Creditors)の議決権の90%の承認を要するという原則を維持しつつ、委員会の構成前、または解決計画(resolution plan)提出の最初の招請が発せられた後は、取下げが認められない旨が明文で規定されました。審判機関は、取下げ申立てを受理してから30日以内に決定を下す義務を負い、この期間内に決定できない場合は、遅延の理由を書面で記録しなければなりません(本改正法8条(IBC12A条(2)、(3)[改正])。
⑸ 否認対象取引および詐欺的・不正取引に関する制度の統合
ア 統一的な申立て制度の創設
優先的取引(IBC43条)、過小評価取引(IBC45条)、搾取的信用取引(IBC50条)、および詐欺的または不正な取引(IBC66条)に関して、統一的な申立て制度が創設されました(本改正法28条(IBC47条⑴[改正]))。これにより、清算人または解決専門家(resolution professional)がかかる取引を審判機関に報告しなかった場合、債権者(単独または共同で)、企業債務者の構成員またはパートナーが自ら裁定機関に申立てを行うことが可能となりました。
イ 審判機関の認定と懲戒手続への連動
審判機関が、本改正法28条(IBC47条⑴[改正])に規定される取引が存在すると認定した場合、清算人または解決専門家によって申立てがなされた場合と同一の効果を有する命令を発することができます(本改正法28条(IBC47条(2)[改正]))。さらに、清算人または解決専門家が、十分な情報または機会を有していたにもかかわらず報告義務を履行しなかったと認められる場合、審判機関はインド倒産破産委員会(IBBI)に対し、当該専門家に対する懲戒手続を開始するよう指示しなければなりません(本改正法28条(IBC47条(3)[改正]))。
かかる取引に関する手続は、CIRPまたは清算手続の終了後も継続します(本改正法16条(IBC26条[改正]))。
⑹ 保証人の資産の譲渡
企業債務者のCIRP係属中に、企業債務者の個人保証人または法人保証人の資産について、担保権の実行によりすでに占有を取得した債権者が、債権者委員会の事前承認を条件として、当該資産を解決計画の一部として譲渡することを認める制度が新たに導入されました(本改正法17条(IBC28A条(1)[新設]))。
法人保証人自体が倒産手続に付されている場合には、当該保証人の債権者委員会の議決権の66%以上の承認が必要であり、個人保証人の場合には、当該保証人の債権者の価額の4分の3を超える承認が必要です。譲渡により得られた金額は保証人の債務に充当され、剰余金があれば保証人に返還されます(本改正法17条(IBC28A条(3)[新設]))。






