「マレーシアの社会保障に関する法制度の概要」

 マレーシアでは、労働者に対する社会保障制度として、以下の制度が設けられています。

  • 従業員積立基金(EPF:Employees Provident Fund)
  • 従業員社会保障制度(SOCSO:Social Security Organization)
  • 雇用保険制度(EIS:Employment Insurance System)

(1) 従業員積立基金(EPF:Employees Provident Fund)

 EPFは労働者の老後の生活資金の確保等を目的とした強制貯蓄制度であり、同制度は、従業員積立基金法(Employees Provident Fund Act 1991)に基づき運用されます。

 ① 加入対象者

 全ての使用者及び労働者は労働者の月々の給与額に応じた年金保険料を納付しなければなりません(従業員積立基金法45条)。「労働者」とは、使用者のために就労するため雇用契約又は見習契約に基づき雇用された者をいいます(同条)。期間の定めの有無や勤務時間は問われませんが、家事労働者や外国人労働者等は除外されています。もっとも、家事労働者や外国人労働者も加入を選択することはできます。

 ② 年金保険料

 年金保険料の額は、労働者の賃金額に基づいて決定されます。ここにいう賃金には、基本給だけでなく、賞与、報酬又は手当等も含まれます(従業員積立基金法2条)。60歳未満のマレーシア人、永住者、又は1998年8月1日より前から任意加入を選択している者には、従業員積立基金法Third ScheduleのPart Aの表が適用され、使用者の負担分は賃金の12%(賃金がRM5,000以下の場合13%)、労働者の負担分は11%となります。前記以外の者の負担率についてもScheduleで細かく定められています。

(2) 従業員社会保障制度(SOCSO:Social Security Organization)

 従業員社会保障法は、怪我等の理由で就労ができなくなった場合の収入の填補について規定しています。同法に基づく従業員社会保障制度は、SOCSO(Social Security Organisation)によって運用されています。

 同法は、以下の2つの制度を提供しています。

  • 雇用傷害(Employment Injury)保険制度:業務上の負傷及び疾病に対する給付
  • 障害年金(Invalidity Pension)制度:業務と関係のない負傷及び疾病に対する給付

 ① 加入対象者

 使用者は同法に基づき自身とその労働者(雇用契約又は見習契約に基づき就労する全ての者)の登録を行わなければなりません(従業員社会保障法11条)。外国人労働者も加入義務の対象となります。

 ② 社会保険料

 社会保険料は従業員社会保障法Third Scheduleが定めるところに従い、労働者の賃金に応じて定められます(従業員社会保障法6条3項)。賃金には、基本給のほか、時間外手当、報酬、食事手当、住宅手当、シフト手当、妊娠手当、病気休暇中の賃金、年次有給休暇中の賃金及び休日手当を含みます(従業員社会保障法2条24項)。

 使用者は、EPFの場合同様、労働者の負担分を賃金から徴収し(第一カテゴリーの場合)、自身の負担分と併せて毎月15日までにSOCSOに納付しなければなりません(従業員社会保障法7条、8条、9条、10条)。

(3) 雇用保険制度(EIS:Employment Insurance System)

 2017年に雇用保険法(Employment Insurance System Act 2017)が制定され、雇用保険制度が導入されています。雇用保険法は、求職手当、早期再雇用手当、賃金減少手当、及び訓練手当の労働者への給付を定めています。

 ① 加入義務者

 この法律は1名以上の労働者を雇用している全ての事業について適用されます(雇用保険法2条1項)。雇用保険法が適用される全ての労働者は、使用者によって登録され、保険に加入するものとされます(雇用保険法16条1項)。日雇労働者、家事労働者、外国人労働者(永住権を保有しない者)等は除外されています。

 ② 雇用保険料

 使用者及び労働者の双方が、労働者の月給額に応じて雇用保険法のSchedule2で定められた保険料率に従い拠出することになります(雇用保険法18条2項)。使用者は、労働者の負担分を賃金から徴収し、自身の負担分と併せて毎月15日までにSOCSOに納付しなければなりません。